私たちの身近に当たり前のように存在している紙。紙のない生活なんて想像もつきませんよね。
ではこの紙、何を原料につくられていて、どのような工程を踏んで完成するのか知っていますか?
今回は、紙がどのようにつくられているのかをご紹介します。
紙の原料「パルプ」から紙になるまで
紙がつくられるまでには、大きく分けて2つの工程があります。それは、パルプをつくる工程、そしてそのパルプを使って紙をつくる工程です。
パルプとは?
パルプとは、紙を作る元となる繊維のことです。主に木材や草などの原料から、この植物繊維を取り出します。私たちの身の回りにある紙は、ほとんどがこうした植物からつくられています。
パルプの原料
パルプには、木材パルプや非木材パルプ、古紙パルプ、合成繊維パルプなど、いくつかの種類があり、それぞれで原料が違います。その中でも木材パルプの原料は、針葉樹や広葉樹が中心となります。
パルプのつくり方
パルプはどのようにつくられているのでしょうか。製造の工程を見ていきましょう。
はじめに、木材から繊維を取り出します。木材を高温高圧の釜の中へ薬品と一緒に入れて煮込み、木の中に含まれる「リグニン」を溶かしていきます。リグニンとは、木材の接着剤のような役割を果たす成分です。そのため、リグニンを溶かす工程を踏むことで、繊維がバラバラな状態になります。釜で煮込んだ後は、異物などを取り除くために洗い流してクリーナーを掛けていきます。そして最後に、漂泊と洗浄の工程を踏めば、紙をつくるための材料となる白いパルプの完成です。
パルプは、製法によって「機械パルプ」と「化学パルプ」の2種類に大きく分けられます。機械パルプは、機械を使って物理的な力を加えることにより、木材をすり潰してつくられるパルプのことです。変色しやすく、耐久性が低いのが特徴ですが、木材から多くのパルプを抽出できます。
一方、化学パルプは、化学薬品と熱を加えて化学反応を起こさせ、セルロース(炭水化物の一種)繊維を抽出する方法です。強度があるのが特徴で、長期保存できるというメリットがあります。機械パルプは新聞紙などに、化学パルプはコピー用紙などに使われることが多いです。
パルプから紙になるまで
完成したパルプを使って実際に紙をつくる工程です。まずは、機械によって繊維を毛羽立たせることにより、繊維同士が結合しやすい状態をつくります。この作業を、パルプの「叩解(こうかい)」と呼びます。「叩解」が完了したらさまざまな薬品を調合。パルプを強くしていきます。
次に、繊維を均一に広げるための「抄紙(しょうし)」の工程です。ワイヤーの上に乗せて流していきますが、この工程においてプレスロールで挟みながら水分を落としていきます。その後、熱によってパルプを乾かし、水分が10%以下になるまで乾燥させます。
ここまで出来上がってきたら、後半は仕上げの工程です。下塗りをして表面に化粧をし、さらに表面を滑らかにしていきます。最後にカッターを使って均等な大きさにカット。このようにして、ようやく紙が完成します。
日本の紙つくり「和紙」のつくり方
紙の中でも日本古来の紙である「和紙」のつくり方をお伝えします。
和紙の原料
普通の印刷用紙とは質感の異なる和紙ですが、主な原料も異なります。私たちが普段からよく目にする洋紙は広葉樹や針葉樹が原料となっているのに対し、和紙には、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)といった植物が原料に使われているのです。
和紙のつくり方
和紙のつくり方は、まず原料となる植物を水に浸けておきます。1日たったらそこにアルカリ性の溶液を入れて煮て、リグニンを取り除きます。水洗いをしてアクを抜き、機械を使って叩解。繊維をほぐしていきます。次に、底部分に細かい穴が開いた水槽へと入れ、中に含まれているチリを取り除きます。その後、もう一度機械で叩解の工程を踏み、紙の性質を調整します。
次に配合の工程です。製造する紙の種類に合わせた薬品を加えて、槽の中で紙の原料と調合します。そして、「抄紙機」を使って原料を流し、徐々に水分を切っていきます。さらに水を切るため毛布で水気を取り、乾燥機へと運ばれていきます。こうした工程を経て、和紙が完成します。
和紙と洋紙の違い
以前は和紙と洋紙では製法が違いましたが、現在は機械が進化したことによって、単純に手法や材料だけで区別するのが難しくなっています。和紙と洋紙の特徴を比較します。
和紙
繊維が太く、強度が高い保存性が高い原料が限られているため、高価
洋紙
耐久性にはやや劣る変色しやすい大量生産しやすいため、安価
和紙の方が紙そのものの機能性は高く優れていますが、高価で大量に製造することが難しいのが難点と言えるでしょう。
木だけじゃない!?そのほかの原料
木の原料として使われている植物の種類は、紙の用途によって違います。その中でも木材以外には下記のようなものが紙の原料として使われています。
コットン
服の素材にも使われているコットンですが、紙の原料としても利用されています。たとえば、コーヒーのフィルタ、筒や名刺などがそうです。コットンは、綿の紡績と綿織物のくずからつくられています。
ケナフ
ケナフは、紙ナプキンなどに使用されている原料です。アオイ科ハイビスカス属の植物で、主に東南アジアやアフリカで栽培されています。成長が早いという特徴があり、古くから使われてきました。
亜麻
昔の西洋では、亜麻が主な紙の原料として広く使われていました。現在でも、タバコの用紙などに使われており、亜麻を原料としてつくられた紙を亜麻紙(あまがみ)と呼んでいます。
サトウキビ
食材として知られるサトウキビですが、紙をつくるために使われることがあります。サトウキビから砂糖を搾るとパガスという成分が抽出されますが、これが紙の原料となるのです。パガスは高温高圧で処理しなくてもいいため、環境に配慮しながら紙をつくることができるとして、エコの面から注目を集めています。
古紙
紙として使用された古紙を使って、もう一度新しい紙へと再生させたものです。「再生紙」と呼ばれます。大きなミキサーに入れてかき混ぜて古紙をほぐし、異物やインクの除去をすることによって、再び紙として利用できるようになります。
私たちの身近にある紙はこうしてつくられていた!
「本」や「ノート」「コピー用紙」「ティッシュ」など普段何気なく使っている紙は、植物を原料として、いろいろな工程を経てつくられています。今回の記事を読んで紙に興味が出てきた人もいるのではないでしょうか?紙に関する博物館や工場見学を受け付けている製紙工場もあります。「紙の歴史や紙をつくる工程をもっと知りたい!」と思った人は、一度そうしたところを訪れてみると、さらに興味が深まると思いますよ。
制作:工場タイムズ編集部