時代劇のワンシーンで、真っ赤になった金属から、刀を作る映像を見たことはありませんか?
この作業には「鍛造(たんぞう)」という技術が使われています。伝統的で、今もなお使われている技術です。
今回はそんな「鍛造」についてご紹介します。
鍛造ってなに?
鍛造とは、高温で熱した金属をたたき、目的にあった形に変える技術のことです。金属を機械などで叩き、圧力を加えます。そうすることで、金属内部の泡やガスが無くなり、金属の強度を高めながら、目的の形状に形づくることができます。
鍛造には、大きく分けて、二つの方法があります。一つは、型鍛造といって、大量生産をしたい、製品の型だけを作る方法。もう一つは、自由鍛造といって、型を作らず、刀や剣のように、金属を直接変形させる方法です。自由鍛造は昔ながらの方法で、熟練の技術が必要なので、少量生産に向いています。
この技術を使って作られたモノは、鍛造製品と呼ばれます。身の回りのモノにも、多く使われている技術です。例えば、自動車の部品や食器。そして、飛行機の部品にも、鍛造の技術が使われています。
鍛造によって作られたモノは、丈夫なのが特徴です。鍛造製品は大きな衝撃に耐え、何年も擦り減らずに、使うことができます。私たちの生活を支える、縁の下の力持ちとして、その技術は幅広く使用されています。
鍛造の仕事はどんな作業内容?
鍛造技術を使って、モノづくりをしている方々を、鍛造工と呼んだりします。彼らは、どのような仕事をしているのでしょうか。
鍛造製品を作るためには、いくつかの工程があります。そのため、鍛造工のお仕事は、その工程の数だけあるのです。一般的な工程に沿って、説明をしていきます。
1. 材料の切断
鍛造製品をつくるための第一歩は、原材料の切断。原材料の鉄などを機械に入れ、必要なサイズや形に切断していきます。上手な切断をすることで、その後の工程をスムースに行うことができます。
2. 加熱
切断した材料を加熱炉に入れ、必要な温度まで加熱します。鉄や鋼などの材料の種類によって、適切な加熱温度があります。そのため、温度に注意をしながら加熱していきます。熱されて真っ赤になった鉄を、テレビなどで見かけた方もいるはずです。
3. 鍛造
加熱した素材を形づくる、最も重要な工程といえます。一般的には、機械を使って必要な形に整える作業をします。作りたい型をセットしておき、その型通りに形づくる場合もあれば、機械や手作業で自由に形作りをする場合もあります。
4. 熱処理
形作った製品を、加熱・冷却することで、最終的な微調整をします。加熱した製品をすぐに冷やすことで、より硬く丈夫にする作業や、製品の加工がしやすいような硬さに、調整する作業です。
5. 仕上げ・検査
きれいな表面をつくるための作業です。ショットブラストと呼ばれる作業を機械で行ったり、傷や不良品がないかの最終チェックをしたりします。
このように「鍛造の仕事」といっても、いくつかの工程があります。鍛造の仕事は、その工程の数だけ、あるということです。工場によって、部分的に任される場合もあれば、複数の工程を任される場合もあります。
鍛造にはこんな人が向いている
鍛造製品を作るために、多くの工程で、機械を使います。でも、機械だからといって、誰でもできる作業ではありません。鍛造には、プレスやハンマと呼ばれる機械などを使います。その中でもハンマを上手に扱うためには、コツが必要なのです。
プレスは、一定の力で鉄を伸ばす機械なので、機械操作ができれば、比較的簡単に形づくることができます。一方のハンマは、機械を操作している人のペダル操作によって、力を変えることができます。そのため、ハンマは、打つ人の技術によってできあがる製品の質や形が変わることがあります。
例えば、ペダルを踏んだら、すぐにハンマが動くわけではありません。はじめは、自分の意図するタイミングで動かせずに、苦労をすることもあるでしょう。また、質の高い鍛造製品をつくるためには、器用さがポイントです。材料を移動させながら、音や感覚を頼りにハンマをたたきます。
そのため、自分が納得いくまで、熱心に取り組める方、周りに認めてもらうために、根気強く一つのことに取り組める方には、向いている職業だといえます。
まとめ
鍛造の技術と仕事について、ご紹介しましたが、いかがでしたか?鍛造という伝統的な技術は、私たちが普段目にするモノに、多く使われています。そのため、自分が関わった仕事が、実際の生活に繋がっていることを、実感できたときには、嬉しくなることもあるでしょう。鍛造をマスターするには、経験が必要な場合があります。その分、一人前になれば、できる仕事も増えます。はじめのうちは、上手くできてなくても焦らず、じっくりと、取り組むことが大切です。
制作:工場タイムズ編集部