こんにちは。
虎ノ門OLのAです。
まずは簡単に自己紹介をさせてください。
趣味は美容とファッションで、がんばって憧れのキラキラOL(概念)を目指して日々努力しています!
中身は美少女好き&アニメ好きのオタクだったりしますが・・・
可愛い洋服に身を包み、可愛いものに囲まれて生きていたい。
そんな私が・・・

こうなりました。
先輩に「Aさん、ダフトパンクみたいでかっこいいね」と言われましたが誰ですか?ダフトパンクとは?
キラキラOLを目指している私がなぜ・・・

たしかにキラキラしてるけど・・・
プロローグ
全ての始まりは、ある日の企画会議まで遡ります。

製造業と絡めた記事を書いて欲しいんだけど…?

ものづくりの体験をしてみて面白さを伝える、というのはどうですかね?

いいね!…そうだ、Aちゃん、溶接体験してみない?

えっと・・・?

Aちゃんが感じたことをありのままに記事にしてもらいたいな。この人はカメラマンとして連れていっていいよ(そう言って先輩を指差す)。

僕カメラとか使ったことないんですけど・・・
先輩どんまい、なんて正直思いませんでした。そもそも先輩の発言がきっかけなので。
そういうわけで「虎ノ門OLが溶接体験をしてみた。」開幕です。
そもそも溶接ってなに?
溶接体験ができる場所を探してアポを取らないといけないわけなのですが、そもそも「溶接」のことをちゃんと理解していないことに気づきました。
「曖昧な知識のまま取材を申し込むのも失礼すぎるよね・・・」となり、困ったときの頼もしい味方であるGoogle先生に聞いてみました。

Google先生は物知りなので、秒でレスを返してくれます。LINEの返事がいつも遅かった元カレ、元気にしてるのかな。
それはさておき、Google先生の回答をまとめると・・・
2つ以上の部材の接合部に熱や圧力、またはその両方を加えて接合部を溶かし、混ぜ合わさった(=溶け込み)状態で冷却することで1つの部材とする接合方法。
とのことでした。
なるほど。イメージしていたものと相違がなくホッとしました。
溶接体験ができる場所を探す
溶接の概念がわかったところで本題へ。次は体験させてもらえる場所を探します。ここもやはり頼りになるのはGoogle先生です。
不安いっぱいの私にとって、いつのまにか心の拠り所になっているような。「これってもしかして・・・」
いや、そんな浮ついた気持ちを抱いて仕事をするのは許されません。静かに深呼吸をして「溶接 体験 東京」と打ち込みます。
すると「浅草橋工房」という場所で溶接体験を行っているという情報が!「やっぱりGoogle先生しか勝たんのか・・・」と禁断の恋に落ちそうではありますが、優先すべきは取材のアポ。
まずは問い合わせのメールを送ります。お願いします、お返事をくださいませ・・・

数日後、返信が届いているではないですか!そこから何度かやりとりをさせていただき、オンラインで打ち合わせをすることに。
打ち合わせで企画内容・体験内容など、もろもろご相談させていただいたところ、初心者でも作りやすい「コーヒードリッパースタンド」の作成を提案してもらいました。
本当にありがとうございます・・・お断りされたらどうしようかと・・・
そして、7月某日。太陽の光が燦々と降り注ぐ中、私は浅草橋へ足を踏み入れたのです。
いざ、体験へ
浅草橋工房さんは名前の通り、「浅草橋駅」から徒歩3分の場所にあります。

浅草橋は、材料屋、レザー工房、文房具企業など、職人の繊細な技術が必要なものづくりが盛んな街。そんな浅草橋に、趣味で工作をされていた代表の坂本さんが「一般の方でも手軽に工作ができるスペースを作りたい」という想いから立ち上げたそうです。
体験の内容は幅広く、今回体験させていただく溶接をはじめ、木工、レザー、アクセサリー、電子工作などが体験できますよ。
老若男女関係なく、様々な方が利用されていて、今回の私のように体験するだけの人はもちろん、趣味の方から、本格的に販売商品を製作する方が、工作のレンタルスペースとして利用するケースも多いそうです。夏休みの工作で利用する親子もいらっしゃるみたいですよ。
作業着姿に変身
浅草橋工房さんがどんなところかわかったところで、作業着姿に着替えます。
こちらが当日の私服。当社は部署にもよりますが、普段も私服でお仕事しています。

そしてこちらが作業着姿。最近になって当社オリジナルの作業着ができまして、営業部の方にお借りしました。ジーンズも1本も持っていないので編集長からお借りしたものになります。キラキラOLを目指すからにはジーンズをクローゼットに入れるわけにはいかないんです(そんなことはない)。

着替えが完了したところで、ついに体験が始まります。
体験の流れは下記の通りです。
①安全に溶接をするための説明
②アーク溶接の練習
③半自動溶接の練習
④コーヒードリップスタンドをつくる
こんな流れで約2時間の体験を頑張っていきます。
安全に溶接をするために!


今回は代表の坂本さんに教えていただきます。よろしくお願いします!

よろしくお願いします。溶接などの作業は火が出たり、金属の粉が飛び散ったりするので、安全にはしっかり気を付ける必要がありますので、まずは用意するものから説明しますね。
①服装は燃えにくい素材のもの
→綿がベスト。化学繊維は危険。肌が露出しないように。
②防塵マスク
→粉塵が肺に入らないように。
③軍手。
→革のものがベスト。よくある作
業用の軍手はゴムなどは化学繊維のものが多く、熱で溶けてしまうので危険。
④溶接マスク。
→溶接で発生する光には強い紫外線が含まれているので、直接光を見ないようにするため。

わかりました!(思っていた以上の重装備・・・)

安全に溶接をする準備ができましたので、早速溶接の練習をしていきましょう。

A:よろしくお願いします!
まずは溶接の練習をしてみる

今回は「アーク溶接」をしていきます!

アークって何ですか?

アーク放電と呼ばれる放電現象を利用する方法ですね。溶接の方法には、ガスでやるもの、レーザーでやるものなどがありますが、今回は電気の力でやっていきます。

電気で熱を発生させて金属を溶かすんですね!

アーク溶接ですが、今回は2種類やってもらいます。単純に「アーク溶接」と言ったり「手棒溶接」と呼ばれるものと、「半自動アーク溶接」をやってみましょう。
アーク溶接

単純なアーク溶接ですが、これは完全に手動でやります。仕組みを説明しますね。まずは、この溶接棒を用意します。


ちなみに、溶接棒の外側には「フラックス」と呼ばれる溶解促進剤でコーティングがされています。金属が高温になると、酸素を吸収しやすい状態になって酸化してしまいます。フラックスはそれを防いでくれます。
溶接棒にプラス、母材(接合したいもの)にマイナスの電圧をかけます。すると、母材から電極へのアークが発生します。このアークで金属が溶けて接合します。
まずは、やってみましょうか。進むにつれて、溶接棒をだんだん起こしていくと良いですよ。

はい!
おそるおそる溶接棒を母材に近づけます・・・


(おおおおおおおお!!!!!!火花出てる!!!!!なんかできてる!!!!!)

もっとゆっくり動かして!

あ、はい!
なかなか要領がつかめず・・・とにかくやってみました。溶接マスクで手元が見えづらく、ゆっくり動かしたいという意思と反して勝手に溶接棒が進んでいき、これはコツをつかむには時間がかかりそうだなと感じました。

一番奥が坂本さんので、それ以外は私のものです。やはり熟練者は一定の太さで綺麗に線ができています。それに比べて私は、線の太さの情緒が不安定すぎますね・・・

溶接でできた黒い跡を「スラグ」というのですが、これはハンマーで叩いて落とします。
溶接棒と母材はくっつけたら張り付いてしまうのでダメなんですが、コツとしては離しすぎないようにすることです。離しすぎると、線が細くなりすぎてしまいます。

角度とか距離って難しいですね。火が出てから少し離さないと、くっついて進まなくなっちゃいますしね。これって、マスターするにはどれぐらいかかるんですか?

人によりますね。まったく上達しない人もいます。アーク溶接で一人前に仕事をするには、だいたい1年はかかるって言われてます。

1年・・・上達するには、感覚をつかむために繰り返し練習を積むのが良さそうですね。
半自動溶接


次は半自動溶接の練習をしましょう。

アーク溶接と何が違うんですか?

基本的にアークを発生させるというのは同じです。大きな違いは、溶接棒をセットせずに済むことです。中にワイヤーが入っていて、それが溶接棒の代わりの役割をし、ワイヤーが自動で繰り出されます。
アーク溶接は「フラックス」でコーティングされていると説明しましたが、半自動溶接は自動でシールドガスが供給されることで酸化を防いでくれます。

ワイヤーが自動で繰り出されるから「半自動」なんですね!
普通のアークと半自動って、どういう目的で使い分けるんですか?

作業環境や条件で選択しますが、作業者の好みによるところもあります。シールドガスを使用する半自動溶接は、屋外だと風で飛ばされてしまうため、屋外の作業には向かない場合が多いです。

なるほど!基本的に好みで選ぶんですね。

では、やってみましょうか。ワイヤーは1cmぐらい出すようにして、スイッチを入れます。

やってみます!


普通のアークより安定させやすいです!

そうですね。半自動の方が難易度は低いと思います。さらにコツをお教えすると、溶けたワイヤーが接合部分にたまって、勝手に進行方向に押されるので、あまり動かすという意識はしなくていいです。

たしかにそうですね。なんとなく、勝手に押される感覚がわかってきました!それをどんな力加減でバランスをとるかが、うまくやるポイントなんですね。
こんな感じで2つの金属板が無事に溶接されました。練習ですが上手くいって良かったです・・・

コーヒードリップスタンドをつくる

練習はこれでOKなので、本番のコーヒードリップスタンドを作っていきましょう。半自動とアーク、どっちでやります?

半自動でお願いします!(即答しました。練習でアーク溶接は苦戦したので・・・)

わかりました。半自動でいきましょうか。
目標の完成品がこちらになります。

支える棒をつくる①:棒を曲げる

溶接する前に、パーツの棒を作りましょう。まずは、万力で固定して90度に曲げていきます。

てこの原理ですね!

支える棒をつくる②:棒を切断する

次は、好みの長さに切断します。万力で固定して、グラインダーで切断します。薄い円形の砥石を高速で回転させる仕組みです。
くずが飛び散るので、メガネをかけてくださいね。音も結構うるさいので、イヤーマフもしましょう。

お〜、本格的な工具ですね!いかにも工作らしい感じになってきました!

支える棒を作る③:バリ取りをする

棒が切れましたね。次はバリ取りしましょう。

(こ、これがうわさのバリ取り・・・会社の業務でよく耳にするやつだ・・・)

バリというのは、加工のときに発生する突起のことですね。今、切断したものも、切断面がトゲトゲしてますよね。これをグラインダーで取ります。

このグラインダーはさっきのと少し違う感じがするのですが?

先程は切断用の砥石を使用しましたが、今回はグラインダー用サンドペーパーを使用します。これを利用する理由としては、大量に削らない、かつ仕上がりを滑らかにするためです。

サンドペーパーにすると、繊細な作業ができるようになるんですね! やってみます!

ちなみにバリ取りはめっちゃ楽しかったです。削れていくのが快感でストレス発散になりました。

いい感じですね。棒のパーツができたので、次はいよいよ溶接しましょう。
そして、虎ノ門OLは遂に本番の溶接を迎えるのであった。
本番の溶接①:溶接する角度を決める

まずは角度をしっかり決めないといけないので、スコヤというものを使います。スコヤとパーツを見ながら直角になるように調整します。

定規みたいなものなんですね?

調整したらこんな感じになります。しっかり90度になるようセッティングします。
本番の溶接②:パーツを溶接する

角度を決めたら溶接します。練習の成果をがんばって発揮しましょう。

はい、がんばります・・・!


どうでしょう?ちゃんとくっついてそうです・・・!

OKです!そしたら、反対側もやりましょうか。


できましたね!台座とも溶接しましょう。

さっきと同じように溶接していきます!

練習の甲斐もあり、慣れてきたのでお手のものです。

ちゃんと溶接されましたね!最後に仕上げをしたら完成です。
本番の溶接③:仕上げ

仕上げは、グラインダーでやっていきます。

再びの登場ですね。

溶接の接合部分のバリ取りをしたり、台座部分を磨いたり自由にやってみてください。

がんばります!
上の接合部分のバリ取りをしたり・・・

ひっくり返して下の接合部分のバリ取りをしたり・・・

表面を磨いたり・・・
我ながら良い感じなのでは??


どうでしょうか?

良いと思います!これで完成です。

ありがとうございます!

最初はどうなるかと思いましたが、無事に完成させることができました!身バレ防止のため顔を切っていますが、まぁまぁなドヤ顔をしています。
それではお手本と比べてみましょう。

全然違いました。
ご覧いただければわかるかと思いますが、接合部分の綺麗さが違います。ちょっとできたくらいで調子に乗ってしまいすみませんでした・・・
溶接について改めてお話を伺いました

改めまして、本日はありがとうございました!

上手にできて良かったですね。

おかげさまで・・・!
改めてなんですが、溶接についてお話を伺えればと思います。溶接の面白さってどこにあると思いますか? ざっくりした質問ですみません・・・

木より簡単に加工できるところですかね。木だと、くっつけるのに釘が必要だったり、しっかり計算してパーツを作らないとぴったりはまらないので。

確かに!金属だと簡単に曲げられますし、難しそうな角度の接合でも溶接ならパパっとできちゃいますね!覚えたらいろいろなことができそうですが、マスターするまで大変そうです……!

あと、金属は木より強度があるところも良いところだと思います。

金属は耐久性がありますもんね。
ちなみに、溶接ってどんな人が向いてますか?

溶接に限らずですが、ものづくりは頭で考える力がある人が向いていると思います。 慣れてくると、頭の中でどうやって接合すれば効率が良いかなど、しっかり想像することができるようになってくるんです。

なるほど!
今日体験させていただいたので、身近な金属製品を見て、「こことここを溶接してるんだろうな」とか想像できるようになりそうです。
エピローグ
編集長からの急な指名により幕を開けた「虎ノ門OLが溶接体験をしてみた。」は、優しく教えてくださった浅草橋工房の坂本さんのおかげで無事に終えることができました。
初めはどうなることかと思いましたし、練習段階では難しすぎて上手くいくのか不安でしかなかったのですが・・・気づけばあっという間の2時間。
正直、2時間じゃ全然足りない!やっと慣れてきた頃に終わってしまったという感じでした。
火花がバチバチと飛び散る様は、ちょっと強く慣れた気がして癖になりそうでした。もう少し難しい溶接にもチャレンジしてみたい気持ちすら湧いてきました。
この記事で興味が湧いたという方はぜひチャレンジしてみてください!
制作:工場タイムズ編集部
取材協力:浅草橋工房