「ものづくり」で神奈川県横浜市の南端・金沢区を盛り上げようと企画された野外イベント「Aozora Factory(以下アオゾラファクトリー)」が2018年10月20日(土)、金沢八景近くにある“海の公園なぎさ広場”で開催されました。
イベントは今回で5回目。「横浜金沢臨海部産業団地」(以下LINKAI横浜金沢)にある企業が出展し、同じ区内の横浜市立大学(芦澤ゼミ)学生が運営スタッフとして参加。そこに地元行政の金沢区も協力する企業・学生・行政(以下、産学官)が連携した取り組みです。
熱気溢れる当日の様子と、イベント1カ月前に行われた運営者会議で産学官それぞれのメンバーに伺った直前インタビューをあわせてお送りします!
22のテントが立ち並ぶアオゾラファクトリー会場に到着!
今回のアオゾラファクトリーは、「ものづくり」「食&ものづくり」「食&最新テクノロジー」「体験お楽しみ」の4つのエリアに分かれ、22のテントでバラエティに富んだワークショップが行われました。さっそく当日の様子をレポートしていきます!
まずは「体験お楽しみ」エリアからスタート!
最初に訪れたのは、株式会社ミナロ、藤森工業株式会社、株式会社シラド化学の3社がコラボレーションした、人気の「ハーバリウム」製作体験。色とりどりの花びらや羽などのパーツをピンセットを使ってビンに詰め、最後にオイルを入れて完成。センスが試されます(汗)。
有限会社協和タイヤ商会の「タイヤで遊ぼう!」体験。廃タイヤを使って作られたシーソーはタイヤによって硬さが違っていて、大人が乗るのは一苦労!会場の子どもたちは上手に乗りこなしていました。
お次は、横浜中華街にある中華料理店での採用率がなんと8割!という、有限会社山田工業所の「中華鍋の仕上げ」体験。金槌で鍋の内側を叩き、金属の厚さを均等にしていく作業を体験。全体的に万遍なく叩くのがとっても難しい!
その他にも世界シェア1位のばねメーカーによる「ばねクイズ大会」、再利用した鉄を使った「金メダル製作」や「水中スクーター」体験、地図を使って金沢区の魅力を再発見する「ガリバーマップ」など、どのワークショップも賑わっていました!
続いて「食&ものづくり」エリアへ
金沢区内で500年以上の歴史をもつ永島農園の「しいたけ収穫」体験。大きなしいたけが木株からポロっと取れる感覚は、ちょっとやみつきになりそうです。
こちらではトミタテクノロジー株式会社、リッチフィールド株式会社による「湘南サラダ苗木植え」体験でハーブ野菜の植え替えにチャレンジ。そのまま食べられるハーブ野菜を根っこから土ごと入れ替える作業は、文字通り新鮮です。
「平成26年度地産地消ビジネス」に採択されたアマンダリーナの、地元で栽培しているみかんの皮(陳皮)や、ゴマ、生姜、山椒、唐辛子など数種類の薬味や香辛料を混ぜて作る「マイ七味作り」体験。オリジナルの七味唐辛子ができました!
その他にも「おいしいバーベキューの焼き方講座」や、オリジナルの「エナジーバー作り」体験などのワークショップが出展。体験を通じて親子で食について考えるきっかけが生まれれば素敵ですね。続いて「食&最新テクノロジー」エリアに移動です。
最新テクノロジーも、青空の下で楽しむのがアオゾラファクトリー流
「食&最新テクノロジー」エリアのブースでは、株式会社アカサカテックの「AR(仮想現実)で街づくり」体験を見学。女の子がタブレットを手に夢中になって芝生の上を歩いています。何をしているのかというと・・
画面の中には、芝生の上に立体的な道路や建物、車やトラック、人が浮き出すようにCGで表示され、アニメーションで動いています。まるでシミュレーションゲーム!
合同会社Life is smallと株式会社金沢臨海サービスからは「モバイル顕微鏡」が出展。スマートフォンに取り付けられる顕微鏡を使えば、ミジンコほどのごく小さなサイズの生物でも、血管の動きまで見えていました。手軽なのに高性能!
その他には小型PC「『ラズベリーパイ』を使ったAI」体験など、最新テクノロジーを青空の下で楽しめるアオゾラファクトリーらしさ満点のエリアでした。
そしてアオゾラファクトリーの真骨頂!「ものづくり」エリアへ
最後は「ものづくり」をテーマにしたブースが並ぶエリアをチェック。アオゾラファクトリーのコンセプトでもある「ものづくり」だけにテント数も最も多く、たくさんのワークショップが開かれていました。
3つのテントで構成された「青空印刷工場」は、LINKAI横浜金沢内にある印刷会社と他業種の計4社によるコラボレーションプロジェクト。「お菓子パッケージ制作」体験では、箱を組み立てて中身のお菓子を詰め、手ぬぐいでラッピングを行います。
LINKAI横浜金沢内に工場がある横浜の名店「霧笛楼」「重慶飯店」のお菓子。バリエーションに富んでいるのでお菓子選びにも思わず迷ってしまいます。
有限会社竹内紙器製作所、山陽印刷株式会社、関東プリンテック株式会社の合同企画は、昔ながらの凸版印刷機を使ってのポストカード印刷。
初めて体験する手刷りの印刷体験に男の子も楽しそう! こちらの手回し印刷機は今も現役だそうで、貴重な産業遺産でもあります。
有限会社タキオアートスタジオ、株式会社フックアップ、ヴィレッジ、株式会社ヨコハマ機工が協力した「木のクリスマスツリー作り」体験も盛況! 電動工具を使ったDIYによるオリジナルのクリスマスツリー作りにチャレンジです。
完成したクリスマスツリーがこちら。3色のシンプルな木工の上に飾られた、糸の星とリースがオシャレですね♪
この他、ペンチを使って針金を曲げながら影絵を作る「針金細工」体験、廃棄生地をアップサイクルした「ポーチ製作」体験、特殊な紙を使って作る「立体的な手形の印刷」体験など、プロに教わりながら取り組む子どもたちの真剣な表情が印象的でした。
アオゾラファクトリー生みの親を発見!
会場でアオゾラファクトリーの生みの親である横浜市立大学 芦澤美智子(あしざわみちこ)准教授と、LINKAI横浜金沢の印刷会社 関東プリンテックの本多竜太(ほんだりゅうた)常務を発見。快晴の下、にこやかに会場内を歩き回っておられました。
お2人には以前のインタビューで、アオゾラファクトリーについてのこれまでの経緯やこれからの思いを語っていただきましたが、その他のメンバーはどのような印象をもたれているのでしょうか?
ここでレポートの途中ですが、工場タイムズ編集部がイベント開催1カ月前に行われた運営者会議に参加し、企業・学生・行政それぞれの視点から思いを伺ったインタビューをお送りします。
【スタッフインタビュー】アオゾラファクトリーはこうして作られた!
イベント開催をちょうど1カ月後にひかえ、横浜市立大学で行われた運営者会議。芦澤ゼミの学生、LINKAI横浜金沢の企業、そして金沢区から総勢30人以上が参加し、イベント運営に関する意見交換が行われました。
会議終了後、インタビューに応じてくださったのは、横浜市立大学 芦澤ゼミの学生・瀧脇 信(たきわきしん)さん、株式会社アカサカテックの堀 昌太(ほりしょうた)さん、金沢区役所 総務部区政推進課の小屋畑 育恵(こやはたいくえ)さんの3人。
学生スタッフとして今回2度目のアオゾラファクトリーに参加する瀧脇さんは、プロとしての仕事意識やスピード感を学んでいました。
「社会人はこんなに深いところまで考えるのか、という驚きがあります。プロの仕事のペースについていくのがやっとですが、皆さんが私たちの意見をしっかり汲み取ってくれるので、自分自身のポテンシャルに気づかせてもらえるという学びがあります。アオゾラファクトリーには、参加した子どもたちが将来『あの体験があって今がある』というようなイベントになってほしいです」(瀧脇さん)
一方、企業人として参加している株式会社アカサカテックの堀さんは、学生たちの斬新な発想力に注目していました。
「プロジェクトを通じて学生たちのアイデアを具現化していく過程がとても楽しいです。大人だけではなかなか新しいアイデアが出ないことがありますが、学生と話しているとこんなにあるじゃないか!という驚きの連続です。これからはその斬新なアイデアを活かしつつ、発足当初の目的である『イノベーションと利益を生むイベント』にしていきたいです」(堀さん)
そしてこのイベントが開催される金沢区から行政として参加している区政推進課の小屋畑さん。今年は区制70周年という記念すべき年でもあり、アオゾラファクトリーへの期待はより一層強かったそうです。
「行政だけで進める地域活性プロジェクトは、色々な制約の中で考えなければならないのが現実です。しかしアオゾラファクトリーは、様々な分野のスペシャリストである企業の方と学生との化学反応で新しいアイデアが次々生まれてきます。行政の立場として、とても頼もしい限りです。このイベントが、LINKAI横浜金沢が世界に向けて発信できる『まちづくりの名物プロジェクト』になっていってほしいと思います」(小屋畑さん)
3人の言葉の一つ一つに、それぞれの立場の実感がこもっていましたが、共通していたのは全員が「アオゾラファクトリーに大きな可能性と価値を感じている」ことでした。
前回記事で芦澤先生が、アオゾラファクトリーを「従来出会うことのなかった人が出会い、新しい変化を生むイノベーションプラットフォーム」と表現した理由が感じられるインタビューでした!
アオゾラファクトリーの未来に高まる期待
さて、ふたたび会場へ戻ってきました。多くの親子連れで賑わったアオゾラファクトリーも、気がつけば終了時間。最後に、関わったスタッフ全員で記念撮影をしてイベントは無事終了しました。
今回ご紹介したワークショップはほんの一部。どのテントも非常に内容が濃く、すべてご紹介できないのが残念です。
来場者アンケートには「普段できないDIYができて楽しかった。年に2、3回開催してほしい」「子供がすごく楽しんでいて、とても良かった。また来たい」といった声も集まり、さらなる期待を未来につなげていくアオゾラファクトリー。
2018年にNPO法人化し、これまでの知見を生かした新しい展開を計画中のアオゾラファクトリーは、来年度にはまた新たなメンバーを加え「ものづくりを軸とした新しい街づくりモデル」としてさらなる飛躍を見せてくれそうです。
来年も秋晴れの下で開催される「青空工場」で、たくさんの笑顔に出会えることが楽しみですね!
→ 前回記事「青空のもと親子でものづくりを体験! 横浜市金沢区のイベント『Aozora Factory(アオゾラファクトリー)』」を読む
取材・文:柳澤史樹/写真:工場タイムズ編集部
写真提供(一部):Aozora Factory・川名マッキー