近年では、DIYが浸透しているように、日曜大工や手芸、工芸などのモノづくりに取り組む方が増えてきています。
そんなモノづくりには古くから歴史があり、その技術は現代に受け継がれています。
ここでは日本の伝統工芸についてご紹介します。
土からつくられる陶磁器
日本では、伝統的な手法でつくられる工芸品を守るため「伝産法」を定めています。その法律の中で守るべきモノと指定された伝統工芸品は、積極的に技術の継承などの保護活動が行われています。
その中でも陶磁器は、日本で二番目に指定品目数が多い伝統工芸品です。土を練って固めた器のことを指し、大きく分けると土器や炻器(せっき)、陶器、磁器の4種類があります。
土器(どき)
土器は、粘土を700~900度の温度の窯で焼き固めてつくる器です。基本的には、低い温度で焼き固める素焼きの方法を使います。軽くて吸水性が高い特徴を持ちます。植木鉢などをつくる際に使われる焼き方です。
炻器(せっき)
炻器とは固く焼いた焼き物のことで、高い強度が特徴です。吸水性が低く、光を通す透光性もあまりありません。比較的簡単につくれる性質から、様々な大きさの器をつくることに適しています。食器や湯飲み、火鉢などの日用品から壺や植木鉢などの装飾品まで幅広く使われる焼き方です。
陶器(とうき)
陶器は自然の中で取れる粘土を材料につくられる土物の器です。手作り感があり温かみが感じられ、高級品の器として好まれてきました。土器に「うわぐすり」という薬を塗り、焼き直します。土器よりも硬く、磁器よりも柔らかいという特徴があります。
磁器(じき)
家の食器などに良く使われるのが磁器の製品です。陶器が土を使ってつくられているのに対し、磁器の場合は石の粉末を使ってつくられています。このことから、陶器は「土物」磁器は「石物」と呼ばれています。透光性が高いのも特徴で、光に照らすと透けて見えます。磁器は吸収性が低く、ほとんど水を通しません。そのため、食器など日常で使う器として利用するのに適しています。
約1万年前から存在する漆器
漆器(しっき)とは、漆(うるし)を塗り重ねて仕上げる器です。もともと日本や中国、タイ、ミャンマー、朝鮮などで古くから使われていました。素材には木材、紙、布、竹などが使われており、これに漆を塗っていきます。実用的に使われる製品も多くありますが、なかには漆を何度も塗ってつくられたような高級品も数多くあります。
漆器の歴史は非常に古く、今から約1万年前には日本に存在していたとされています。もともと漆(うるし)は、漆の木に傷をつけそこから出てきた樹液を使ってつくられていました。この漆の木は約12000年も前からあったとされており、この漆を使った器は約9000年前のモノが発見されているのです。
もっとも多い伝統工芸品の織物
織物は日本の伝統工芸品の中で指定を受けている品目が一番多い伝統工芸品です。織物とはタテ糸とヨコ糸が組み合わさってつくられた布のことを指し、基本として、平織り、綾織り、朱子織り(しゅすおり)などがあります。
平織り
平織りはタテともヨコの糸が1本おきに通っている織物です。もっとも単純なつくりと言えわれていて、厚手になりにくく摩擦に強い特性があり、綿や麻、毛織物など幅広く活用されてきた織り方です。
綾織り
綾織りは2本以上の糸が組み合わさって織られます。厚手にしやすい特性があり、ジーンズにはこの織り方が取り入れられています。構造によって斜めに線が見えることから、斜紋織とも呼びます。
朱子織り(しゅすおり)
朱子織りはタテとヨコがそれぞれ5本以上の糸からつくられた織物です。もっとも糸と糸の密度が高く、滑らかな質感を表現できます。柔軟性に優れ、厚手にできるなどの特徴を持っています。サテンの柄を表現するときにはこの織り方を使います。
紹介しきれない日本の工芸品の数々
日本工芸会が区分する諸工芸品には、ガラスで工芸品をつくるガラス工や、竹でつくる竹工(ちっこう)、金属を用いる金工(きんこう)、石を加工する石工(せっこう)などがあります。その他、竹や藁(わら)を編んでつくる編組品(へんそひん)も諸工芸品の一つです。
これらの諸工芸品は古い歴史を持っており、美術館などに展示されているモノが多く見られます。石工によってつくられる岩偶(がんぐう)は縄文時代の頃からつくられていた遺物で、土偶のような人形の形をしています。編組品においては、竹を編んでつくられた籠や手提げが代表的です。生活用具として取り入れられていたモノが多く、昭和の頃に良く使われていた品が展示品として美術館などに置かれています。
日本の伝統を楽しんでみよう!
伝統工芸品にはいろいろな特徴や種類がありますが、日常的にこうした品に触れる機会は少なくなっています。モノづくりに興味がある方は、伝統工芸品に触れられる場所へ積極的に足を伸ばしてみてください。
伝統工芸の体験
実際に陶器づくりを体験できる施設は多くあります。ろくろやガラス細工など、普段できない貴重な体験をできるでしょう。自分でつくった陶器は持ち帰ることができます。
伝統工芸展
伝統工芸展を行っている場所へ足を運んでみても良いでしょう。展示会は全国で開催されています。なかには、地元に根付いた文化を中心に展示している場合も多く、興味のある方は他県の展示会へ出向いてみても面白いでしょう。
伝統工芸品の専門店やEC
専門店やECサイト(通販サイト)などを利用することで、工芸品を購入することが可能です。工芸品は高いモノというイメージを抱く方が多いかもしれせんが、小さなモノであれば数千円で購入できます。
モノづくりを辿る楽しみ
モノづくりの過去を辿っていくと、歴史を感じることができます。現代から見ると新鮮に感じるからこそ、「伝統工芸」に触れることで新たな発見があるかもしれません。現在では、道具や技術が発展し、伝統的なモノづくりを手軽に体験できる施設がたくさんあります。週末の予定として、足を運んでみてはいかがでしょうか。
制作:工場タイムズ編集部