ルーズソックス・つけまつげ・厚底・パラパラ…平成が生んだギャル文化は数知れず、多くは社会現象にまでなりました。そしてもうひとつ、平成ギャル文化を語る上で忘れてはいけないのが「デコ電」です。
デコ電はケータイをデコレーションしたものの略称で、携帯の普及とともに大流行しました。信じられないかもしれませんが、ラインストーンで装飾されたキラキラの携帯が「かわいい」の最先端だったのです。
デコ電の歴史を振り返りながら、今なお愛され続ける「デコレーション」の進化と魅力を一緒に追及していきましょう。
携帯の普及とデコ電
デコ電なるものが登場したのは、今からさかのぼること約30年前。携帯の先駆けとしてPHSが販売された頃です。2022年現在、30歳以上の人は流行の目撃者だったに違いありません!
この頃から徐々にデコブームが広まり、デコ電は瞬く間に注目されるようになりました。デコレーションを施すことを「デコる」と表現し、卓上鏡やカラコンケースまでありとあらゆるものがデコる対象でしたね。
PHSの普及とカスタマイズ
PHSが普及した1995年頃のデコレーションは、本体にプリントやデザインを施したものがメジャー。さらに機器全体を自分好みにカスタムすることも注目され、アンテナを光らせたり着メロを変更する人が多くいました。
読者のなかには、アンテナ?と驚く人もいるかもしれませんが、スマートフォン以前に販売された携帯の多くにはアンテナがついていたんですよ!そしてその先端を光らせたり、飾り付けたりするのが一般的なデコでした。
今だとコップの淵にぶら下がるマスコットが売られていますが、あれがアンテナの先にくっついている感じです。イメージできましたか?ちょこんと乗っかっている姿が妙に可愛くて、さまざまなデザインが販売されました。
デコ電の大流行
携帯電話が発売、普及した2000年以降から、ラインストーンやパーツを使用した派手なデコが流行するようになりました。折りたたみの携帯電話が登場し、デコレーションの可能性はぐっと広がったように感じます。
内側にはプリクラなどの厚みのないシールなどを貼り付け、外側には立地感のあるラインストーンなどが使用されました。折りたたみの特性を活かし、表裏で雰囲気を変えたり、開いたときに繋がりのあるデザインになっていたり。
このようなデコレーションの複雑化と大流行によって、テレビや紙面での特集も増え、カタログ本やレシピ本も販売されるようになりました。この人気は2010年頃にスマートフォンが販売されるまで、長きにわたり続くことになります。
テレビと雑誌の影響力
当時は今ほどSNSが浸透しておらず、情報や流行の発信元はもっぱらテレビ・ラジオ・雑誌でした。画面や紙面を飾る芸能人は憧れの姿!彼ら彼女らの発信を真似ることによって多くの流行が生まれました。
デコ電の起源には諸説ありますが、叶姉妹・浜崎あゆみ・ベッキーなどの芸能人の影響を強く受けたとされています!特に「あゆ」こと、浜崎あゆみの人気は絶大でした。
若者ならではの流行り
ベッキーをきっかけに、キーホルダーの重ね付けも大流行!携帯のサイズを超える大きなキーホルダーをつける人もいました。キーホルダーの重みで携帯の重さが倍以上になるなど、面白おかしい話題が度々世間を騒がしていました。
恋人の話題はいつの時代も尽きませんが、当時で言うと…特別な相手専用の着メロ(着信音)を用意するのが流行りでしたね!2曲用意しておいて、恋人や片思いの相手からの連絡だけ、特別な着メロが鳴るようにするんです。ゴリゴリの恋愛ソングが定番で、今なら胸やけしてしまうほどの重い歌詞が多くありました(笑)
デコ素材としてプリクラも多用されました。これも謎の流行ですが、見られたくない変顔や恋人とのプリクラは、携帯の電池パック裏やその蓋に貼り付けていました(笑)。プリクラをデータ保存できるようになってから、この文化も少しずつ消えていきましたね。
デコ電の発展
接着剤・つまようじ・ピンセット!これが3種の神器!シールタイプのラインストーンも売っていましたが、それだけではすぐに剥がれてしまうので、接着剤は必須でしたね。デザインを決めてからラインストーンをひとつずつ固定していくので、意外にも根気が必要です。
その結果、手軽さを求める声が多くあがるようになります。デコ電キットが販売されたり、デザインが出来上がった状態のラインストーンが出回るようになりました。より手軽に!より派手に!デコ電を身近に楽しめるように発展したのです。
斬新なデザインが話題
デコ素材も増えはじめ、携帯よりもサイズの大きいパーツや、推しの名前やマークを埋め込んだ斬新なデザインも話題になりました。
歌姫として人気を集めた浜崎あゆみの影響力は絶大で、彼女をモデルにした「あゆデザイン」のヒョウ柄携帯も発売!デコられた状態で携帯が販売されるという画期的なものでしたね。
専門店ができた
デコ電の大流行によってデコがスキルとして認められ始めると、スクールや専門店もオープンするようになりました。最初は学生を中心に広まった流行でしたが、いつの間にか本格的な職業に成長するほどの社会現象だったんですよ。
デコ電の終着地点とリバイバル
スマートフォンの普及によってデコ電ブームは落ち着きましたが、デコレーション
への関心はいつの時代も続いています。韓国ブームをきっかけに、アイドルの写真を入れるトレカケースのデコが流行中!
体育祭や文化祭などの学生イベントでは、丁寧にデコられた応援グッズや装飾品を目にするようになりました。SNSの浸透により、手順や完成イメージを明確に共有できるようになったのも、リバイバルの一因でしょう。
平成レトロ
z世代と呼ばれる10〜20代の若者たちは、平成の流行に懐かしさを憶え「平成レトロ」と表現しています。年齢によっては、懐かしさ=新しさにもなり得るのですね。時代の経過とともに、流行が繰り返されているのも納得です。
デコレーションは表現方法のひとつとして、今も形を変えながら愛されています。今後も新しい世代ならではのデコが流行り、新たな流行を生み出すことでしょう。
平成文化のグッズ化
ここまでデコ電について話してきましたが、平成ギャル文化を象徴する商品がここ数年で再販されるようになりました。衣類・おもちゃ・キャラクター・雑誌まで、見覚えのあるものが登場しています。
サンリオが出したガラケー形のフォトフォルダーには、デコ電へのリスペクトが感じられます。再販も決定しているので、気になる人は公式ページから詳細を確認してみてくださいね。
これにはアラサーの筆者も、すっかり心くすぐられてしまいました…。サンリオの世界観を保ちながら、当時の流行を再現していて可愛いですね。デコ欲を掻き立てられます!
まとめ
平成の一大ブームとなったデコ電は、時代の変化とともに少しずつ形を変えて広まったことがわかりましたね。誰もが簡単に楽しめる状態に成長したことで、今もなおデコレーションは愛されているのでしょう。
若者たちが呼ぶ平成レトロには、懐かしさと新しさが混在しています。当時の流行を面白がることで、また新たな流行が生み出されるのかもしれませんね。
制作:工場タイムズ編集部