広大な工場内の見学は「南棟」からスタート
広大な工場内の見学は、まずは2005年から操業している「南棟」から始まりました。ここでは主にトリートメント、シャンプー、ヘアカラー剤の「1剤」が作られています。
見学通路からトリートメント製造エリアの内部を見ると、「真空乳化装置」と呼ばれる真空タンクがありました。上部にある小さなタンクで溶解された原料が下に降りてきて、下にあるタンクに入り、真空状態になってかき混ぜることで、クリーム状のトリートメントが作られています。
こうした液に接触する作業を行うエリアは、製造環境を整えるために、クリーンルームになっており、ちりや埃を完全にシャットアウト。こちらで働く従業員の方々は、髪の毛が落ちないように頭を覆うキャップをかぶるなど、通常の作業服とは違うユニフォームを着ていました。外から見ても、とても清潔そうな環境にあることがはっきりわかります。
女性からの要望に応えた結果、ヘアカラー剤は800種類に
先に進むと、1剤と2剤を混ぜることにより髪の毛の脱色と発色を行う「ヘアカラー剤」が作られていました。ゆめが丘工場では、南棟でヘアカラー1剤(80g)が、後ほどご紹介する北棟でヘアカラー2剤(オキシダン1L)が作られています。「ヘアカラー剤は、女性からの要望が高いこともあり800種類もあるんです。1トンタンクで、毎日違う色を作っています」と、高橋マネージャーが説明してくれます。
そんなにも多くの種類があったとはビックリ! 女性の美しさへの飽くなき欲求に応えていくと、それだけの種類になるんですね。
「ジャジャンッ!」突然のクイズ出題!?
驚きながらタンクを眺めていると、ここで突然、案内をしてくれていた脇阪さんが「ジャジャン! では問題です!」と言い出しました。えっ、どうしたんですか一体!?
「この1トンタンクで80gカラー剤が何本できるでしょうか?」。なんと、いきなりクイズが出題されたのです。あ~ビックリした。
高橋マネージャーいわく、「このゆめが丘工場には頻繁に見学者が訪れているのですが、正直、工場見学で設備を見てもらっても、結局見た目は一緒のタンクなので面白くないんですよ。なので、こうやってクイズを出題して興味を持ってもらっています。クイズばっかりやってるわけじゃないですよ?(笑)」とのこと。
ちなみにクイズの正解は「12,000本」。脇阪さんの名アシストもあって、見事正解! 正解すると「正解!BINGO!」と書かれたラミネートカードがもらえて、見学後にカードと交換にプレゼントがもらえる嬉しいサプライズが。次はいつクイズが出題されるんだろう? とドキドキしながら楽しく見学を続けることができました。こうしたサービス精神は、企業のお客さまに対する姿勢そのものなのでしょうね。
工場で最大の特長「自動倉庫」とは?
工場で最大の特長はすべて「自動倉庫」を経由して管理されていること。南棟、北棟それぞれに自動倉庫があるほか、できあがった液を充填する前の中間品を管理する「中間品自動倉庫」があり、調合室と充填室を効率よく真ん中で保管しています。
「全部、自動倉庫を経由して作業が進んで行くというのは、あるようでなかなか珍しいと思います。原料から液から製品まで全部、自動倉庫に入れて経由させて作っているのが、うちの売りですね」と、高橋マネージャー。
かなり緻密で高度なシステムのようですが、こうしたシステム作りには相当お金も時間もかかるはず。どうしてこのような仕組みになったのでしょうか。
「じつは、昔はよく間違えが起こっていたんですよ。シャンプーやトリートメントも同じような製品名で、AとかBとかついているだけということがあるんです。そしたら、人間がやることですから、いざ入れてみたら、『Aかと思ったらBだった』みたいことがあったんです。そういう間違いをなくす仕組みを作って行った結果、QRコードやバーコードを使ってオートメーション化された最新のシステムになっていったんです」と、村田本部長さんがお話してくれました。
確かに、人間はどんなに注意をしていても間違いは必ず起こるもの。そうした人的ミスが、自動倉庫を経由することで防がれているんですね。
「1つ1つの製品に対してこと細かなチェックをして気持ちを込めて作っています」
パッケージに充填された製品はカメラによるロットナンバーのチェックなどを経て、「包装室」へと運ばれ、自動で箱に詰められていきますが、ここで作業員は液漏れがないか、ロットナンバーがチューブに正しく打たれているかを改めてもう一度、目視でチェックしています。
さらに、箱詰めされた段階、段ボール箱に入れられた段階でも再三、オートチェッカーで重さをチェック。「1つ1つの製品に対してこと細かなチェックをして気持ちを込めて作っています」と、脇阪さん。
最新のシステムによる管理と、心を込めた従業員の手によるチェック。クオリティの高い製品を生み出す「ゆめが丘工場」の核心に触れた気がしました。
「魅せる工場」をより具現化させた「北棟」
2016年に増設された北棟では、南棟とほぼ同じ製造作業がおこなわれていますが、調合室などより作業の様子が見えやすい配置がなされています。
北棟の設備では、トリートメント、パーマ剤、シャンプーや、ヘアカラーの2剤など、ヘアカラーの1剤以外のものを全部作っているため、よりフレキシブルな形で作業ができる配置になっているためなんだとか。
また、見学に来た方へ中の様子を見せることで「魅せる」導線にするためでもあるそう。上から見下ろすと、作業をしている方々の様子が一目瞭然でとても見やすくなっていました。
お客さまの信頼を裏切らないように、“その1本”を常に最高品質でお届け
ところで、「ゆめが丘工場」にはどれくらいの人が働いていると思いますか? 現在、社員ではない請負業者の方などを含めると工場内には250名ほどが働いています。作業工程は、チームごとに違うものの、1つのタンクを1人が担当しているわけではなく、何個かを同時スタートさせ、それをだいたい3人で担当しているとのこと。
実際、従業員のみなさんはどんな思いで製造に携わっているのかを高橋マネージャーに聞いてみました。
「製品のクオリティー、安全性はもちろんのこと、使い心地にもこだわっています。毎日、何千・何万本と生産している中で、最終的にお客さまに届くのはそのうちの1本です。お客さまの信頼を裏切らないように、“その1本”を常に最高品質でお届けするという使命を持っています」
「お客さまの信頼を裏切らないように」という一言が、とても印象に残りました。ミルボン製品を使うことで美しくなりたいという人々の期待に応えたい、という使命感が日々の作業を支えているのですね。
このように「ハイクオリティな製品を届けたい」という思いを持って働いている従業員の方々は“ミルボン愛”も強いようで、みなさん、自社製品を使っているのだとか。「入社してから欠かさず使ってますし、もう離れられないですね(笑)」と、高橋マネージャー。
なんだか心が美しくなった気がした一日
こうして、長い時間をかけたインタビュー、工場見学が終了。ミルボンの製品は、現在も年6%ずつくらい生産量が増えているといいます。
「いかにお客さまが美しくなれるか」。1人ひとりの顔が違うように、髪質も人によって様々です。こだわり抜き心を込めて作った製品を、美容室を通じて正しく使い美しくなってほしいという、ミルボンのものづくりに対する実直な姿勢を感じることができて、なんだか自分の心もとても美しくなった気がした一日でした。
「魅せる工場」を体現!「デザインワークウェアプロジェクト」
洗練された製品を生み出す過程を公開しているミルボンですが、そこで働く従業員の方の作業服は、ごく一般的なものに見えました。「これでは“魅せる工場”としていかがなものか」ということで、実は、作業服についても、大きく変化しようとしていました。
現在、ミルボンでは、ゆめが丘工場の作業服を刷新する「デザインワークウェアプロジェクト」を進行中。このプロジェクトは、ミルボン製品の「パッケージデザイン」を監修しており、ミルボンの製品に対する想いや、デザインの指針を知る「京都市立芸術大学」のデザイン専攻修士課1回生と、プロフェッショナル集団・株式会社糸編が共同でおこなっているもの。
女性を応援するヘアケア・ブランドとして従業員の方々にも美意識を持ってもらいたいとの発想と、工場見学を頻繁に実施している「魅せる工場」を体現すべく始まった取り組みです。
学生達が「ミルボンゆめが丘工場」を見学した時に感じたイメージを元に、「上質感・洗練さ」をコンセプトに決め、それに見合う作業服のデザインを考案。学生から提示された20案の中から、度重なる協議を重ねた結果2案に絞り込まれ、6月22日(金)に東京のミルボン本社でサンプルチェックがおこなわれました。
これまでの作業着の概念を覆す上質で洗練されたデザインに注目!
デザインはそれぞれ、これまでの作業着の概念を覆す、まさに上質で洗練されたもの。もちろん、見た目だけでなくワークウェアとしての機能性にも優れているようで、着用モデルを務めた方からは「すごく動きやすく、ゆめが丘工場で仕事をするイメージが湧いてきました」と、大変好評のよう。
完成・お披露目は11月頃を予定しているとのこと。工場タイムズでは、その様子もレポートする予定です。どんな新しい作業服が誕生するのか? 今から出来上がりが楽しみですね。ミルボンがこれからいかに「魅せる工場」として進化していくのか、さらに注目していきましょう!
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取材・文・写真:岡本貴之
写真提供(一部):株式会社ミルボン