シャンプー、トリートメント、ヘアカラーなど、私たちが日常的に使っているヘアケア製品。CMやドラッグストア、ネットなど……、さまざまな製品情報があふれています。「いったいどれを使えばいいの?」なんて、つい迷ってしまうことも。
そんななか、ヘアケアにこだわりを持つ人たちから絶大な支持を集めているのが、美容室用ヘア化粧品専門メーカー「株式会社ミルボン」(以下・ミルボン)のヘアケア製品です。実は、2016年にミルボン製品の製造工場が増築され、外観・内観を含め「魅せる工場」としてリニューアル。現在では、国内外から多くの工場見学者が訪れているそう。
一般的に、工場といえば「きつい・汚い・危険」という、3Kのイメージがつきもの。「魅せる工場」ってどういうこと? 工場タイムズはさっそく三重県伊賀市にある「ミルボン ゆめが丘工場」に行ってきました!
“美しい生き方、美しい髪は人の心を豊かにする”が理念
ミルボンは、1960年の創業以来「顧客第一主義」を掲げ、ヘアデザイナーを通じて女性の美しい生き方を応援する事業を展開する、美容室用ヘア化粧品専門メーカー。
主力ブランドは、ヘアケア製品ライン「milbon(ミルボン)」「オージュア」、アウトバストリートメント「エルジューダ」やヘアカラー剤「オルディーブ」など。美容室専用ながら、髪にこだわりを持つ女性たちには有名なブランドです。
風光明媚な景色の中に建つ、洗練された建物
伊賀神戸駅から車に乗って20分ほど、「伊賀の里」としても知られる美しい景色の中に、洗練された大きな建物が現れます。ゆめが丘工場は2005年に建てられた工場で、2016年には製品需要の高まりを受けた生産能力の拡張に伴い、新たに「北棟」を増設。
敷地内には、木々に囲まれた公園も。公園から続く斜面には階段が設けられており、川を挟んだ住宅地に住む方々など、周辺住民が憩いの場として気軽に利用できるように開放されています。こんなところから、早くもミルボンの企業としての姿勢を感じることができますよね。従業員の方々も、お昼休みには公園やその周囲でお弁当を食べたりしているようで、なんだかうらやましい!
さて、今回お話を聞かせてもらったのは、村田輝夫さん(取締役 生産本部長・ミルボンタイランド生産担当)、高橋輝和さん(生産本部 総務課マネージャー)、脇阪かおりさん(生産本部 総務課総務)。ときおり冗談を交えながらの和気藹々とした会話からは、社内の良い雰囲気が伝わってきました。
病院が処方箋を出してくれるように、美容室のカウンセリングを通してお客様に適切な製品を
ミルボンの製品は、ヘアデザイナーのアドバイスにより使用する、美容院専売品。つまり、一般消費者が直接ドラッグストアやネットショップで購入して使用するのではなく、美容師さんの施術を通して使用するのが基本です。
しかし、ネットで検索すると、ミルボン製品がネットショップで売られていることもあります。ただし、それはミルボンとしては本意でないのだと、村田本部長は語ります。
「美容室での対面カウンセリングを通して、お客様に適切な製品を買っていただくというのがもともとの主旨なので、本来そういう売り方はしていないんです。その理由を説明するときに、調剤薬局で売っているのが当社の商品で、ドラッグストアで売っているのが一般向けのメーカーさんの商品だという例え方をしています。
風邪をひいたらお医者さんが処方箋を出してくれて、それを調剤薬局で買いますよね。例えるなら、それが当社の商品。一方、一般向けのメーカーさんのシャンプーやトリートメントは、風邪をひいたときに『自分の状態に(なんとなく)合ってそうだから』とか『CMで宣伝しているから』とかドラッグストアで風邪薬を買うのと同じです。よりピッタリ合うものを選ぶためには、プロの目が欠かせないと考えています」
なるほど、わかりやすい例えです。おっしゃる通り、シャンプーやリンスを選ぶとき「なんとなく良いって聞いたから」とか、金額を見て決めている人も多いかもしれません。体調が悪いときは診察してもらって薬を処方してもらうように、髪のプロからのアドバイスをもとに自分に合ったヘア製品は使うことが、美しい髪を維持するために必要なんですね。
現在まで続くポリシーの元となったミルボン創業時のエピソード
あくまでも、選び抜かれた美容室ありきの製品であること。その思いの源流は創業時にまで遡ります。
ある年の暮れに社員が美容室に集金に行った際、ひどく手が荒れた美容師さんが出てきたそう。その美容師さんの手を見て、「一生懸命働いている美容師さんのためになる企業になりたい」と感じたことから、“美容室と二人三脚で歩んでいく”というポリシーが生まれたのだとか。
「美容師さんが繁栄するようなことであれば、どんなお手伝いでもします」と、村田本部長。そんな言葉から、美容室用ヘア化粧品専門のトップシェアを誇るミルボンの揺るぎない信念と製品への自信、誇りが強く感じられました。
後編では、そんなこだわりを持つミルボンの製品がどのように作られているのか、実際に工場で作られている様子とともにご紹介します。
取材・文・写真:岡本貴之
写真提供(一部):株式会社ミルボン