WEBメディア「工場ワークス」や当サイト「工場タイムズ」などを運営する、株式会社インターワークス。仕事で製造業の方々とやりとりをさせていただく機会も多く、社内でたびたび研修を行い、製造業に関する知識を深めています。
そこで今回は、日本から世界ブランドを作るべく取り組んでいる、「ライフスタイルアクセント株式会社(ブランド名:ファクトリエ)※以下ファクトリエ」をお招きし、セミナー【ものづくりカレッジ】を社内で開催しました。
ファクトリエの出張型セミナー【ものづくりカレッジ】とは
今回開催した【ものづくりカレッジ】は、「日本のものづくりを盛り上げる」ことを目的とした、ファクトリエ独自の活動。
「日本製のものづくり業界」に起こっている厳しい現状とともに、そこで生まれた働く意識の変化やイノベーション事例を講義として会社に出向いて伝えることで、社員の働く意識や仕事に向き合う意欲を高めていこうという試みです。
セミナーは以下の2部構成になっています。
第1部:講演会
アパレル業界の現状やファクトリエというブランドについて
第2部:品質の高い洋服の見極め方講座
目利き力をアップさせよう
日本を代表するような大企業から小さな会社まで、開催実績200社・累計6,000人が参加した人気セミナーです。ファクトリエ側は「日本のものづくり」への興味喚起や啓発を促すことを目的としていて、今のところ無料で実施されているそう。
『ファクトリエ』とはどういうブランドなのか
はじめに、小林さんより「ファクトリエ」について紹介していただきました。ファクトリエは、メイドインジャパンにこだわった工場直結のファッションブランドです。
アパレル業界ではメーカーがコストの安い海外生産へどんどんシフトしていき、1990年には50.1%だった国内生産比率が、2014年にはついに3.0%まで減少。この20年間でアパレルをはじめ日本のものづくり現場から消えた職人の数は、なんと800万人にも及ぶとのこと。
また、世界の一流ブランドからオーダーを受注している(ほど技術力のある)日本の工場があるにも関わらず、業界の流通構造により現場は過剰な原価抑制を強いられ利益率が悪化。その結果、工場の倒産や人員削減が続いているのだそうです。
この問題を解決すべく、ファクトリエは国内600以上もの工場へ足を運び、高い技術や独自のこだわりを持つ工場と直接提携。「高い技術力で作られた高品質な商品を適正価格で消費者に販売するとともに、工場自身も適正な利益を確保することができる」という、今まで誰もやらなかった独自の仕組みを作り出したのです。
その仕組みがユニークな理由として、まずはブランドタグがあります。ファクトリエの商品についているタグには、ファクトリエのブランド名とともに、生産している工場の名前が入っています。今までのアパレル業界の常識として、下請け側となる工場の名前がブランドネームと並んで入ることなどあり得なかったところを、工場の名前をあえて前面に打ち出したのです。
続いての取り組みとしては、商品の価格設定があります。今まではブランド側が決定していた販売価格を、生産者である工場が決められるようにしたのです。これにより、生産コストを減らすと同時におきてしまう品質の低下を防ぎ、工場側も十分な利益を確保ができるため、結果として品質の良いものを市場に適正な価格で販売できるようにしたのですね。
こんなところからも、工場の自身の誇りややる気を引き出すとともに、「工場を元気にしたい」というファクトリエの姿勢が感じられます。
会社のHPを見ると、虎屋の社長から映画監督、アスリートまで、そうそうたる方と代表の山田さんが対談されていて、交友関係の広さをうかがわせます。実は、元々そういった著名人の方々との面識はなく、それなのに知り合えたのは、「会いたいと思う人には自ら手紙を書いてきた」ことによるものだそう。
「10通書いたら会えない人はいない」とは、山田さんの言葉。まだ起業したばかりのころ、ファクトリエの本質的なものづくりに共感してくれるブランドや会社社長の方々に、何度も面会を依頼する手紙を書き続けたそうです。当然、当初は何度も断られました。それでもめげずに手紙を何度も書き続けたことで、シャネルの日本社長についに会うことができたという山田さんの言葉に、仕事に対しての情熱を感じました。
実際にファクトリエの商品に触れることでわかる、商品の本当の価値
ものづくりにこだわる職人たちが工場で作った洋服は、実際はどのように違うのか。第2部の「品質の高い洋服の見極め方講座」では、ファクトリエの商品であるシャツやジーンズを実際に触れてその違いを体感できます。
「価値のあるものを知らなければ、価値のあるサービスやプロダクトは生み出せない」という、考えのもとファクトリエはこの講座を実施。実際に価格の異なる3枚のシャツからどれが一番クオリティ高いかをみんなで当てたり、大量生産とそうでないビンテージジーンズの見極め方などを教えてくれたりします。
大量生産のジーンズとファクトリエの作るビンテージジーンズの違いは、生地にあるそう。生地を折り返してみると、大量生産のジーンズは生地がほつれてこないよう縫いとめてあるのに比べ、ファクトリエのものは裏にその縫い目が無いのが特徴。
シャツは、脇の部分の縫製の幅が狭かったり、袖にフラス芯が入っていたりするのが、クオリティの高さの特徴だそう。より高価なシャツになると、ボタンの材質がプラスティックではなく貝が使われていたりするのだとか。
イベントを終えて、【ものづくりカレッジ】で何を学んだか
セミナー終了後、【ものづくりカレッジ】に参加した若手社員に感想を聞いてみました。
「ファクトリエさんが価値を言語化することを、会社の戦略として立てていることが参考になりました。山田社長が1日1通毎日手紙を書かれていることや、600箇所の地方の工場をタウンページ片手に回られたことなど、情熱を持って仕事に取り組んでいる様子に感銘を受けました」(野田さん)
「本当に高品質なものは手にする機会は少ないですが、今回見極め方を聞いて生地を触ってみると全然違うのがわかりました。ファクトリエの働き方や1日1個行動を継続するという話を、これからの業務に活かしていきたいです」(田中さん)
今回このセミナーに社内から参加していたのは、入社1~3年目くらいの若手社員がメイン。「日本から世界のブランドを作る」というファクトリエの熱意や、その思いに応えてものづくりの現場である工場も誇りを取り戻し変化していくという事例を聞いて、「自分たちも日本の工場を支えていく」という若手社員たちの仕事に対する意欲も高まったのではないでしょうか。
ファクトリエが【ものづくりカレッジ】で目指しているのは、「日本のものづくりへの興味喚起や啓発」。1社1社企業をめぐってその理念を伝えていくのは、地道な活動ではありますが確実にブランドの認知を高め、「日本から世界ブランドをつくる」というファクトリエの実現したい未来へつながっていることを感じさせられました。
文:西尾悠希/写真:工場タイムズ編集部
写真提供(一部):ライフスタイルアクセント株式会社