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人情味たっぷりでキレッキレなクラフトマンシップが満載! 『町工場見本市2018』

2018/02/26公開 / 2023/06/01更新

どこか昭和を思い出させる「町工場(まちこうば)」という言葉。

今回工場タイムズ編集部では、二日間にわたり東京フォーラムで開催された「第4回 町工場(まちこうば)見本市」(主催:葛飾区および東京商工会議所葛飾支部)を取材してきました。

今では環境問題や国外への移転進出などもあり、減少傾向にある町工場ですが、そこには日本のものづくりを支える、人情味がたっぷりでかつキレッキレなクラフトマンシップが今もなお残っていました。

日本の製造業の底力をとくとご覧ください!

多彩なジャンルの町工場が集結!

このイベントは東京都葛飾区と、東京商工会議所葛飾支部が主催し、今回が第4回目の開催。葛飾といえば柴又の「寅さん」や亀有の「両さん」などの愛すべきキャラクターが有名な東京の下町。23区のなかでは4位となる2,673もの町工場があるのだそうです。

かつては「玩具」、つまりおもちゃの町として栄えたという歴史があるため、そのおもちゃに使用されてきた金属やゴム、プラスチックや皮革といった多彩なジャンルの町工場が数多くあるのが特徴。

今回は「町工場がある ものづくりの原点がある」というキャッチコピーのもと、67もの団体や企業が出展し、自慢の商品や技術を紹介するというもので、会場である東京国際フォーラムのホールに多数の人が来場していました。

もちろんなかには特殊な製品や技術もあり、私たち一般人から見ると「?」なものもあったのですが、実際に取材してみると、私たちの生活を見えないところで支えているものばかり。そして何よりも「ものづくり」の技術の高さやつくり手の思いが込められたもので溢れていました。

伝統をひきつぐ江戸の手仕事

歩きはじめた私たち編集部の目に最初に止まったのは、色とりどりの美しい手ぬぐい。やはり下町とくればこうした『江戸グッズ』は欠かせない!と、出展者である「東京和晒(わざらし)株式会社」のブースにお邪魔しました。

明治22年に創業という同社の技術は「注染(ちゅうぞめ)」とよばれ、一般的な手ぬぐいのように一面だけでなく、表裏がなく染め上がるのが特徴。特に関東地方で染められた浴衣や手ぬぐいは「東京本染」と呼ばれ、注染のなかでも高級品として人気が高いのだそうです。11にもわたる工程のほとんどが、機械ではなく手作業で行われているとか。これぞ日本の伝統工芸!

次にお邪魔したのは、これまたカラフルな三味線のような楽器が並んだ「東京角丸」のブース。聞くとこれは三味線ではなく「SHAMIKO(シャミコ)」と呼ばれる、同社がオリジナルに開発した和風創作楽器だそうです。

和風創作楽器「SHAMIKO」。書道家の書が描かれている

「東京角丸」は葛飾区の金属加工会社「セベル・ピコ」の社長の趣味が高じて立ち上げた商品ブランドで、紙でできているボディの表面に自由に絵が描けたり、デコレーションができたりするのが新しい!

純和風なシブイものから、アーティストの瀧千智さんによるライブペインティングで、とても美しい作品へと仕上げられている様子を見ることができました。

このSHAMIKOは、新旧の要素を取り入れた「ネオジャパネスク」なテイストの製品ですが、根底に流れているのは日本らしい手仕事の丁寧さです。

アーティスト瀧千智さんのライブペインティング

美しい作品になったSHAMIKO

ボディの桝が四角、サウンドホールの丸で「角丸」。これが日本の国旗をイメージしていると聞いてナルホドと納得。

手仕事の丁寧さ、というところでいえば、江戸の伝統工芸である「江戸切子」も見逃せません。「下町のプリンス」と呼ばれる人気の芸人さんや、Jリーガーの名前が入ったギフト用のグラスも展示してあります。

人気Jリーガーのノベルティとして作られた江戸切子グラス

またよく見ると、これまでの伝統的なものとは異なる個性的な文様があります。出展されていた「清水硝子」さんに聞くと、近年減っている切子職人さんの代わりに、若いデザイナーがデザインし、同社が製造を請け負うといった新しいビジネスモデルを展開しているとか。伝統工芸の技術と若き才能のコラボレーションでできあがった新しい江戸切子に、新時代のアートとしての可能性を感じました。

さすが江戸は粋だなあ〜と楽しく歩いていると、これまたひときわカラフルなブースが目に飛び込んできました。子供のころから見慣れていた「ブリキのオモチャ」有限会社 三幸製作所さんのブースです。

かわいすぎるパンダカー

とにかくかわいらしくカラフルな電車やクルマ、金魚などが所狭しと並んでいます。戦後間もない昭和25年創業の同社は、これらを輸出用として作り出したのが最初だったとか。

基本的にすべてがゼンマイ仕掛けで動くのも魅力。写真のように8の字のルートをくるくると走り回るかわいいその姿にほっこりさせられます。

八の字に電車が走っているのがわかりますか?

かわいいロボットを手に取って見ると、その背中にはしっかりと「MADE IN JAPAN」の刻印が!「ここにも日本のものづくりの歴史が残されているんだ」としみじみ感動しました。

今や貴重!?MADE IN JAPANの文字

世界に誇る最先端技術も目白押し

さて、ここまで読んで「葛飾はこういう伝統的な製品しかないのか」と感じる読者の方もいらっしゃるかと思います。が!町工場の魅力はこれだけではありません。会場内を歩くなかで、未来を支える最先端の技術を私たちは目にすることになります。

チカチカと光る機械とカシャカシャという音に興味を惹かれて近寄ってみると、それはベルトコンベアで運ばれる無数のネジの一つ一つの誤差を判定する検査機のデモンストレーションでした。パソコンの画面を見るとなんと「0.01ミリレベル」で数値が測られているのです。なんじゃこりゃあああ!

ものすごい勢いでネジのサイズを正確に判別しています!

ここは葛飾区にある合同会社A-eyeのブース。この会社は、大企業をリタイアした技術者の方や、葛飾区の町工場などが複数で設立した「モノづくりの専門集団」だそうです。

このほかにも形の違うネジを一瞬で見分けたり、バラバラと無造作に撒かれたネジの個数を一瞬で数えたりできるなど、最先端技術の結晶ともいえる機械が並んでいました。いやーホントすごい…

一度記憶したネジ(中央下の黒い画像)を記憶し、一度に数を数える機械

さてお次は葛飾区にもキャンパスがある「東京理科大学」のブース。ここでは人工筋肉を使ったマッスルスーツが高い注目を集めていました。

マッスルスーツは、ライフジャケットのように背中に装着しスイッチを入れると、人工筋肉に「プシュー」と空気が入り膨らみ、自動的に身体を起こしてくれるもの。重たい荷物を少ない力で持ち上げることができ、腰の負担が軽減されるので、こうした作業の多い現場などで重宝されそうです。

編集部スタッフも実際に装着し、荷物の持ち上げにチャレンジしてみたところ、確かに腰に負担がかからずに持ち上げができる!と驚いていました。人工筋肉は以前からあったそうですが、こうしたロボティクスは、AIの進化と並行し、今後さらに発展することでしょう。

失礼ながら当初の予想以上に面白く、満足度が高いこのイベントを満喫し、さあそろそろ帰ろうとした出口にひときわ大きなブースを発見。なにやら丸い球体にケーブルが繋がって水槽のなかに展示されています。壁には「葛飾町工場の底力」のボードに、複数のカッコいいポスターが。

聞くと、これは「DOBON(ドボン)」という超小型の無人深海探査機。通常は巨額な開発費がかかるため、要望があれどなかなか実現できなかったものを、なんとか安価でできないものかと葛飾区内の小規模企業5社が前述の東京理科大学とも協力、産官学の連携で製品化を目指す「Challenge!1000M」のプロジェクトブースでした。

以前にテレビで、ロケットの部品を小さな町工場が開発するドラマが放送されていましたが、まさにその海版じゃないですか!このプロジェクトは、これまでになかった構想で、深海の水圧にも耐えることができる球体のガラス球を製作したところが特徴だそうです。

まるでSF映画に出てくるマシンのよう…

原発事故の起きたチェルノブイリのような、人が立ち入ることのできない過酷な環境でも活躍できるマシンということで、テレビ番組で放送された時の録画も流れていました。「か、かつしか、スゲー!」改めて町工場のもつ技術力の高さに驚かされたのでした。

クラフトマンシップを支えるもの

今回の見本市で印象的だったのは、対応してくれた「職人社長」さんたちが、失礼ながら皆さん妙齢にもかかわらず、とてもイキイキと元気に感じられたことです。古くからの伝統技術を引き継いでいる会社、他社と力を併せて大きなプロジェクトに取り組んでいる会社などさまざまあるのですが、皆さん「ものづくりが楽しくてたまらない」といった少年のような人ばかり。

もちろん高い技術力や発想力をベースに、下町ながらの人情あふれる人間関係があるからこそ互いに協力して大規模プロジェクトにチャレンジできるのでしょう。

「会議はね、仲間たちと居酒屋でやるんです。」

とイタズラっぽく笑う社長さんの言葉も下町らしさ満載。

こうして町工場の技術力の高さや可能性に驚かされた「町工場見本市2018」の取材は終了。職人社長たちの「キレッキレなクラフトマンシップ」を来年まで楽しみに待とう!と思う楽しいひとときでした。

町工場見本市2018 公式サイトhttp://machikouba.jp/

取材・文:柳澤史樹/写真:工場タイムズ編集部

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