2022年6月に開催された「日本ものづくりワールド」。 パナソニック インダストリー株式会社(大阪府)は、「多様なデバイステクノロジーでより良い未来を切り拓き、豊かな社会に貢献しつづける」をミッションとし、電気・電子部品、制御機器、電子材料等の開発と製造、販売までを一貫して手掛ける会社だ。 今回、産業用デバイスの展示を行う、ご担当者の方にお話を伺った。
ハード / ソフト両面から立ち上げを支援
まずご紹介いただいたのは包装機。しかし製造・販売しているのは、包装機そのものではない。
パナソニック インダストリー株式会社は、産業用デバイスのハードウェアと、ソフトウェアによるサポートまでを含めた「パッケージサービス」を提供できるのが強みだ。産業用デバイスのハードウエアとソフトウエア両面からの立ち上げ支援を行うことで、機械の導入と調整による時間的、人的負担の解消に寄与している。
業界最高クラスの性能「MINAS A6シリーズ」
フラグシップ商品、サーボモーターの「MINAS A6シリーズ」(ミナスAシックスシリーズ)をご紹介いただいた。
サーボモーターとは、半導体製造装置やロボットなどの工作機械など、産業機械の制御を行うためのデバイスだ。位置制御、速度制御、トルク制御を同時に行うことができる
磁気回路の最適化と独自のモータ構造を開発し、従来品に比べて30%減の小型化(67.5mm)と、20%減の軽量化(760g)を実現。さらに高速化(6500r/min)と大トルク化(350%)により、活用領域が大幅に拡大した。性能的にも業界最高クラスのものだという。
「高速応答」でリアルタイム性の高い制御へ
次に、サーボモーターの制御の役割を担うサーボアンプを紹介していただいた。コントローラーとサーボアンプ間の配線を簡略化し、62.5μs周期の「高速応答」が可能となったという。
従来のサーボアンプの制御の流れは以下の通りだ。
- 1.センサーからアナログ信号(ボルト)を受信
- 2.信号をデジタルに変換
- 3.コントローラーでプログラムを組む
- 4.サーボアンプへ指示を送る
手順2,3を経ることで、制御に時間的な遅延が発生してしまう。
しかしこちらの製品を使用すれば、2つの手順を省略できる。
- 1.センサーからのアナログ信号を、直接サーボアンプへ送る
- 2.フィードバックをセンサーが受け取る
こうしてセンサーが直接サーボアンプへ指示を送ることで、変換ユニットが必要なく、リアルタイム性の高い制御、高速応答が可能となる。さらに指示した通り動いているかというフィードバックを受け取ることで、より高精度な制御が実現できるというわけだ。
今後は、1台のサーボアンプで2台のモーターを制御できる「2軸一体型」の製品を発売予定だ。高品質なデバイスの開発によって、企業の多様なニーズに幅広く対応している。
「レーザー樹脂溶着」で高品質な接着を実現
続いて説明していただいたのは「レーザー樹脂溶着」の技術だ。レーザーを透過できる素材を使用し、下部を溶かして接着するという仕組みとなっている。
レーザーにより部品の接着を行うことで、得られるメリットは3つある。「時間短縮」と「高密閉性」、そして「部品の軽量化」だ。
従来は部品の接着には接着剤やネジを用いるが、接着剤は管理に手間がかかり、ネジは取り付けの工程に時間がかかってしまう。レーザーで樹脂を溶かして圧着する技術であれば、短時間で高品質な接着が可能となるという。接着する様子を実演していただいたが、レーザー照射はまさに一瞬。時間短縮効果も納得だ。
また、EVなどの自動車部品については、ネジで接着すると重量が大幅に増えてしまう。このレーザー樹脂溶着技術を用いれば、グラム単位での軽量化とコストダウンも可能になる。
多様な対象物に対応「計測検査用センサー」
パナソニック インダストリー株式会社では、多種多様な計測検査センサーも取り扱っている。
ご担当者は「センサーを使うことにより、自動的に読み取ったデータをCSVにデータとして貯めていくことができるので、書き間違い、読み間違いが防げます。」と話す。
人が対象物を測定しデータを記録する作業は、手間もかかる上に、ヒューマンエラーの原因となりうる。検査をデジタル化することで、時間短縮だけではなく、ミスを防ぐ仕組み作りを可能にしているという訳だ。
しかし、対象物の素材や形は無数にある。計測用センサーを活用するためには、各ワークに合わせたプログラミングやセッティングが必要となる。
そこでパナソニック インダストリー株式会社では、センサーをプログラムのソフトと共に提供する、パッケージサービスを提供している。
シート材の歪みと欠けを検出する専門機
パッケージサービスの例として説明していただいたのが、リチウムイオン電池の製造工程に使用されるシート材を検出するための機械だ。
この機械はセンサーを用いてシートの縁の欠けや破れなどを感知し、不良品をはじくことができる。しかし、ただセンサーを導入するだけでは、シートの「歪み」と「欠け」を見分けることが難しかった。そこで、PLCというコントローラーとセンサーを組み合わせることで、シートが欠けた部分だけを検出するというソリューションを提案したという。
ご担当者は話す。「実際こういうコントローラーは、既存の装置には付いています。ただ、企業ごとにプログラミングして…という作業は大変手間がかかってしまう。こちらのコントローラーを後付けすることによって、既存の設備はそのままで、お客様の工数を削減していくことができるんです。」
このように、デバイスだけ、センサーだけではなく「それらを製造工程でいかに活用するか」というノウハウも合わせて提供している。
機器の導入から運用まで、顧客のニーズにきめ細かく寄り添っていく。これがパナソニック インダストリー株式会社の強みと言えるだろう。
多様なメーカーと共に製造業界の問題解決へ
労働力不足や環境問題、情報化社会、安全性の保障など、現代の問題意識の高まりを受け、日々進化が求められている製造業界。
特殊用途の専門機も既に複数の導入実績があるというが、今後もメーカーと共に製造業界が抱える問題の解決を目指していきたいという話が印象的だった。
「Your Committed Enabler」…顧客の挑戦に向き合い、思い描く未来を共に実現する。このスローガンは、製品とソフトウェアをパッケージで提供するというパナソニック インダストリー株式会社のサービスにも通底している。
制作:工場タイムズ編集部
取材協力:パナソニック インダストリー株式会社