2022年9月に開催された「町工場NOW!」。
展示を行っていたのは、滋賀県大津市にある1963年創業の株式会社藤沢製本。
創業から50年以上に渡り、一般書籍や学生参考書などを専門に製本を行う会社である。
会場では、「町工場プロダクツ」の共同出展の中で、「テキトーフォーミー」というパネルとともにかわいらしい「かばおのノート」が展示されており、ひときわ目を引いていた。製品の誕生について代表取締役の藤澤佳織氏に伺った。
「かばお」誕生秘話と「紙」へのこだわり
ーノートを作られたきっかけは?
きっかけは、製本業の認知を広めていきたいという思いです。
製本業というものをもっと知ってもらうには、自社ブランド・自社製品を作って、それが認知されたら製本屋も一緒に認知されやすいかなと考えて、自社ブランドを始めました。そこでうまれたのが「かばお」です。これも、工場内の機械を見ていたら、この顔が浮かんできたんです。ノートも横向きにすると、かばの顔になっています。
「かばお」誕生のきっかけとなった工場内の機械「下固め機」
「かばおのノート」と「かばお」
やはり製本業なので、紙つながりでまずはノートかなと思って、技術は持っているので
コストをかけずにできることから始めました。
弊社は創業60年弱で、京都で創業して本店を滋賀県に移転して現在に至ります。50年以上、出版社さんからのお仕事で本を作り続けている製本業です。
相手は企業さんであって、いわゆるBtoBの請負加工業なので、お仕事の依頼を受けて仕様通りに物を作る業態なんですよね。出版不況とも言われているこの時代なので、だんだん仕事自体が減ってきています。今のまま同じように続けててもだめですし、何かしなきゃなっていう思いがありました。
もう一つ、私がこの会社に嫁いできて工場や作ったものを見たときに、50年間赤本を製本し続けているって、すごいことだって純粋に感動したんです。どうしてこの技術をもっと表に出していかないんだろうと思って、製本業のことをもっと多くの方に知ってほしかったんです。認知が広がると、関係者の意識も変わって業界自体も良くなっていくのではないかとも思っています。
町工場NOWは今回の出展が4回目なのですが、最初は商品もありませんでした。「本って誰が作ってるか知っていますか?」という内容の展示だったんです。
ーそうだったんですね。「かばお」が製本やモノづくりに触れるきっかけになれたらということなんですね。
きっかけが「かわいい!」や「キレイ!」でいいと思っています。
まずは知ってもらって、「へ~。藤沢製本というところが出しているんだ。」「本を作っている会社なんだ。」と知ってもらえたらうれしいです。
このような展示会で知ってもらって、ファンになって買ってくれて、さらに使ってくれる人が増えたら、もっとその幅は広がっていくじゃないですか。
ですので、製本だけではなく、こういった目に留まるようなキャラクターなども作っています。
製本屋の誇りということで、紙というのはどこかにいれていきたいなという思いがあって。
本になるはずだった紙を粉砕して中に閉じ込めた「かばおのキューブ」というペーパーウェイトも作りました。
ペーパーウェイト「かばおのキューブ」
製本業って、モノづくりってカッコいい
ー製本業やモノづくりを世の中に広めているなかで、気づきはありますか?
町工場って、もう3Kじゃないんですよね。昔からの企業が多いので、意外としっかりしています。でもやっぱりITとかベンチャーに憧れる若い子も多いのが現実です。
どうして憧れるんだろう?と考えたときに、単純に格好良く見えるからなんだろうなと。
職業自体がかっこいいと思ってるか思ってないかの違いなんだろうなと気づきました。
それであれば、製造業をかっこいい・おもしろいのイメージに変えたいと思っています。
そうするためにはやっぱり今のままではダメで、例えば、工場勤務=作業着・油臭いというイメージもかっこいいものに変えていきたいですね。
特に、私たち後継者の世代が中心となって変えていくことが必要なのかなと思います。
かばデザインのノートがつくられたきっかけは、製本業の誇りがつまったものであった。
「かばおのノート」「かばおのキューブ」のように、身の回りにあるかわいい!・キレイ!などと感じたものから、製本業やモノづくり・製造業に興味をもつ人がもっともっと多くなることを願う。
取材先:株式会社藤沢製本
URL:https://fujisawa-seihon.jp/
制作:工場タイムズ編集部