世界中で大人気のiPhone。日本国内でも大手携帯通信のキャリア3社がこぞってiPhoneのサービスを提供しています。
iPhoneといえば、アメリカの Apple社の製品ですが、アメリカでつくられているわけではありません。
では一体、どこの国で、どのように製造されているのでしょうか? 今回はiPhone製造工場の秘密に迫ります。
iPhoneは中国でつくられている!
新モデルが発表されるたびに大きな話題となるiPhone。その大半は中国で製造されています。
鴻海(こうかい)精密工業とは?
台湾に本社を構え、中国に生産拠点を持つフォックスコン・グループの中心的存在で、電子機器の受託生産を行う世界最大の工場です。受託生産とはAppleからの依頼で、iPhoneやiPadなどの製造を行います。iPhone6については、その6割の生産を鴻海精密工業が行っており、ほぼ独占的に製造しています。
なぜ中国でiPhoneはつくられるのか?
まず思い浮かぶのは「人件費などのコストが安いから」でしょう。答えは「×」です。では、正解は何でしょうか?
人材の確保
たとえばアメリカでiPhoneをつくろうとしたら、約9000人のエンジニアが必要といわれます。それだけの人を集めるには当然、何カ月もの時間がかかるでしょう。ところが、中国ならわずか二週間で集めることができるのです。圧倒的なエンジニアの数と、それに伴う生産能力の高さが中国にはあります。
人件費は高い?安い?
著しい成長が続く中国では、人件費を引き上げる動きが相次いでいます。iPhone6をつくるときもiPhone5より生産難易度が高いため、賃上げが行われました。今の中国で人件費が安いということはありません。
それでも製造を中国で行う理由は、しっかりとしたサプライチェーン(原料の調達、製造から消費者のもとへ届くまでの流れ)が存在しているからです。しかも鴻海精密工業のサプライチェーンは質が高いことで知られます。たとえばディスプレイなら、原料の到着からわずか4日以内で1万台もの組み立てができる生産能力を備えています。
世界中でつくられるiPhone
では、中国以外ではどこでつくられているのでしょうか?中国に続く国として、最近はインドが注目されています。次はインドでの生産に焦点を当てて解説します。
インドにおける生産
鴻海精密工業では、Apple製品の製造をインドの工場で行う計画が進んでいます。2020年にはそうなる予定です。なぜインドなのでしょうか?それは、インドのスマートフォンの市場規模が世界第3位を誇るうえ、中国に比べて人件費などのコストを安くできるからです。Apple側も労働人口の多いインドで、コストを抑えながら現地生産できる強みは大きいと考えているようです。
iPhone以外の製造品は?
たとえば、Apple初のスマートウォッチとして発売されたApple watch。生産工場があるのはやはり中国で、江蘇(こうそ)省の常熟(じょうじゅく)にあります。ただし鴻海精密工業ではなく、MacBookやMac Pro、iPodなどを製造してきたクアンタ社の工場です。
日本メーカーもiPhoneにかかわっている!
製造拠点は中国にあるものの、iPhoneの中身は日本製の部品が採用されています。世界の中でも高い質を誇る日本の電子産業は、Appleの貴重な下請け企業として信頼されているのです。
カメラ機能
iPhoneの手ぶれ補正機能を果たしている部品はアルプス電気とミツミ電機という二社によってつくられています。暗い場所でも撮影が可能な「光学式手ぶれ補正用アクチュエーター」は欠かせない装置になっています。アルプス電気は中国へ、ミツミ電機はフィリピンへと生産拠点の移転を進めています。
ディスプレイ
4.7型と5.5型の両方の液晶パネルをつくっているのが、ジャパンディスプレイです。スマートフォンやタブレット、デジタルカメラ、カーナビなどのディスプレイを幅広く手掛けています。iPhoneだけでなく、中国メーカーからの受注が増加すると予想されています。
また、iPhoneの画面を点灯させるLEDバックライトをつくっているのはミネベアです。同社は中国だけでなくカンボジア、タイなどにも生産拠点を増やしています。
iPhoneの重要部分を支える日本企業
高い生産技術と豊富な労働力を武器に、iPhoneの製造では圧倒的な存在感を放つ中国。しかし、内蔵部品など重要なところに目を向けてみると、多くの日本企業がその確かな腕を発揮しています。質の高い製品を、低コストで提供できる日本のスキルはAppleにも欠かせない大きな戦力となっているのです。
制作:工場タイムズ編集部