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メッキって、実は金属以外のものにもできる!? メッキ加工技術の特徴とメッキ製品の種類

2018/06/26公開 / 2023/09/27更新

「めっき」と、ひらがな表記されることもある「メッキ」。おもに金属製品に対して施され、見た目をよくするために行われます。

このメッキが金属製品に対して行う表面処理であることを知っている方は多いかもしれませんが、その具体的な目的や種類、メッキ処理を伴う加工が行われた製品の具体例などは、あまり広く知られていない部分も。

そこで今回は、このメッキに関するより詳しい知識や情報についてご紹介します。

メッキ加工とは?

もともとメッキは「塗金(ときん)」と呼ばれており、金属製品の鋳造において欠かすことのできない作業のひとつでした。この「メッキ」という言葉は漢字で書くと「鍍金」と表記することから、本来はひらがなもしくは漢字での表記が正解。JISなどでは現在でも「めっき」とひらがな表記がされていますが、今では「メッキ」とカタカナ表記が一般的になってしまっています。

メッキとはその語源のひとつ「塗金」という言葉から分かるとおり製品の表面に金属を塗る作業であり、この作業によって塗られた金属の膜自体をメッキと呼ぶこともあります。

メッキの技術は紀元前1500年のメソポタミア文明の時代には既に行われていたことが分かっており、約3500年にもおよぶ歴史があります。ちなみにメソポタミア文明の時代に行われていたメッキは主に鉄製品の劣化防止や装飾を目的として、沸点が低く塗りやすいスズがメッキとして使用されていたことも分かっています。

このメッキの技術は、シルクロードで中東や中国を経由して、仏教などと共に日本へ伝来したといわれています。そのため奈良時代以降に建立された大仏の表面には、水銀アマルガム法などを応用したメッキ処理が施されていることが多く、この時代の大仏が現存している理由のひとつにもなっています。

また、メッキは1800年に電池が開発されたことをきっかけにシアン化金メッキや硫酸銅メッキなどの方法も発明され、現在ではその処理方法も多岐にわたります。

メッキ加工の目的

このようにメッキとは、製品の表面に金属を塗って膜を作る作業のことですが、その目的としては主に3つあります。どのような目的で、メッキは行われているのでしょうか。

防食

先程お話したようにメッキの技術は古くから存在しており、メッキが施された大仏などの歴史的遺産の中には、今でも大きな損傷がない状態で現存しているものが少なくありません。このことはメッキに金属の腐敗や錆びを防ぐ「防食効果」があるためであり、このことは古くから存在するメッキ本来の目的のひとつといえます。

また、このようなメッキのことを総称として「防食メッキ(防錆メッキ)」と呼び、今日においては特に高い耐食性が要求される建築資材や機械部品などにも、品質向上を目的として施されています。

装飾

古くから存在する大仏の中には、もともと金色に光り輝いていたとされるものも存在し、そのようなものは金メッキがされていたと推測できます。

このような金メッキをはじめとしたメッキは、製品の装飾を目的で現在でも行われています。たとえばオリンピックなどで贈呈される金メダルは100パーセント金でできているのではなく、表面のみに金メッキされたものであることはよく知られています。

このような装飾を目的として施されるメッキを総称として「装飾メッキ」と呼び、今日では家電やデジタル機器の外装などに対しても行われています。

機能性を持たせる

たとえば本来伝導性のない製品の表面に金属をメッキとして塗ると、その製品は電気を通すことが可能になります。このような商品に本来はない機能を持たせることもメッキの目的のひとつであり、「機能メッキ」と呼びます。

機能メッキされた具体例としては電子部品などがあり、基盤に施すはんだづけもメッキの一種です。

メッキ加工のやり方と種類

メッキの種類には、いくつかのものが存在します。その中から特に頻繁に行われるものに、「電気(電解)メッキ」と「無電解メッキ」の2種類があります。

電気(電解)メッキ

メッキを施したいものをメッキ皮膜となる金属イオンを含んだ溶液に浸し、電気を流すことによってメッキを行う方法を「電気(電解)メッキ」といいます。

この方法で皮膜に使うことが可能な素材は、金、銀、銅、亜鉛、黒クロム、硬質クロム、光沢ニッケル、スズなど多岐にわたります。そのため、多くの製品に対して行われているメッキの方法でもあります。

無電解メッキ

「電気メッキ」が電気を流すことによってメッキを施すのに対し、「無電解メッキ」は電気を使用せず、化学の力で溶液中の金属イオンを皮膜化させてメッキを行います。この技術が開発されたことにより、金属イオンを皮膜化させるメッキは電気を通さないプラスチックやセラミックなどの不導体にも行えるようになり、より多くの商品に対してメッキを施せるようになりました。

また、「無電解メッキ」には、置換メッキ、銀鏡反応、自己触媒型などの方法があり、条件に応じて異なる方法が選べます。そのことで、より効率的かつ精度の高いメッキを行えるようになりました。

自分でメッキ加工したい場合はどうすればいいの?

防サビのために、自分で簡単なメッキ加工を施すことはできます。ですが、手間や安全性などの面から考えると、電気メッキによる加工はあまりおすすめできません。

市販で手に入るものを使って、簡易的な電気メッキをすること自体は可能です。塩酸が含まれた洗剤をメッキ液にして、スズなどの金属とメッキしたい金属を直流電流でつなげることで、小物であれば自分でもメッキ加工がおこなえます。

ただ、使い終わったメッキ液には金属が溶け出しているため、基本的に排水溝へ流すことはできません。確実に安全性を保って処理するためには、廃液処理の業者に依頼する必要があります。

自分で電気メッキをすると、

・小さい金属製品に限られる

・出来ばえはきれいにいかない可能性

・廃液などの片付けが大変

などのデメリットが考えられるため、はじめからメッキ加工の業者に頼むほうが確実で安全と言えます。どうしても自分で電気メッキをしたい場合、電気メッキの過程において安全性の高い対処ができるか、自己責任で見極めなければなりません。

ちなみに、メッキ加工とは少し違いますが、メッキ風の塗装をするという方法もあります。防サビ効果などの性能はメッキ加工より劣りますが、スプレータイプの塗料を吹き付けて表面を塗装することで、自分でも安全にメッキ加工の代用ができます。

メッキ加工の種類

メッキ加工はたくさんの種類があり、依頼する業者によって対応可能なメッキは様々です。ここでは、いくつかのメッキ加工の特徴について触れていきます。

亜鉛メッキ

防サビ目的で多くおこなわれているメッキです。亜鉛メッキは、電気メッキでおこなう電気亜鉛メッキと高温で溶かした亜鉛に浸す溶融亜鉛メッキの大きく2つの方法があり、どちらも耐食性があります。

電気亜鉛メッキをした後は、クロメートやユニクロなどといった化成処理をして、メッキ加工を重ねる場合がほとんどです。

ニッケルメッキ

亜鉛メッキ同様、電気ニッケルメッキと電気を使わずに表面処理した無電解ニッケルメッキの2種類があります。

耐食性に優れ、キラキラと光る光沢が特徴的なメッキです。空気に触れると変色することがあるため、クロムメッキなどを重ねることがあります。

金メッキ

基本的に、金は防食性が高い上に熱や電気の伝導性が良いので、アクセサリーなどの装飾品からコネクターなどの工業用品にまで広く使われています。

ただ、金の価格は高いので、表面などの一部だけを金に加工するために、金メッキが使用されることが多数あります。

アルマイト

アルミニウムに電解処理をすることで、表面に強い酸化被膜を作ることをアルマイトといいます。

アルミは、空気に触れている部分が酸素と結びつき、酸化被膜という薄いサビを作ります。この酸化被膜が金属を守るおかげで耐食性を持っていますが、被膜の薄さゆえに、環境によっては傷つきやすく、腐食することがあります。

そうした問題を起こさないよう、陽極にアルミをつないで表面処理を施すことで、より耐食性の優れたアルミニウムに加工することができます。

身の回りのメッキ製品

今日においてメッキはさまざまな製品に対して行われており、その中には一見金属が塗布されているようには思えないものも。そこで、メッキが施されている製品の具体例とその特徴などについてみていきましょう。

アクセサリー

お話したように、メッキは装飾を目的としても行われます。そのため、見た目が非常に重要なアクセサリーの中には、内部の金属には安価なものを使用し、表面に装飾メッキを施すことによって高級感を感じさせる見た目などにしているものも多く存在します。

工具

メッキの防食性を、金属の錆びや腐食を防ぐことを目的として利用することもあります。たとえば使っていると劣化してしまうことが多い、金づちやノコギリ、スパナなどの金属製の工具に対しても、錆びや腐食を防ぐためにメッキは行われています。

半導体

半導体は部分的に金など伝導性のある金属を塗る必要があるため、ここでもメッキの技術が活用されています。半導体に対しては、ニッケルメッキや銅メッキも同様に行われることが多くなっています。

食器

食器は縁の部分などに施される装飾だけでなく、抗菌性の高い銀や銅、コバルトなどがメッキによって塗られていることがあります。

衣類

一見縁がないようにも思えますが、最近では衣類にもメッキが行われているんです。特に、消臭や抗菌効果が期待できる銅や銀は、靴下などに対して塗られていることがあります。

東大寺大仏

東大寺の大仏が建立された時代には、既にメッキ技術が日本に伝来していました。この東大寺の大仏の表面に対してもメッキは行われており、それによる防食効果が今日においても東大寺大仏を現存させているといっても過言ではありません。

装飾だけじゃない!進化するメッキ

今回は、よく装飾などに使われているというイメージがある、メッキについてその特徴や種類をご紹介しました。

「無電解メッキ」が新たに開発されたことによって不導体へのメッキが可能になったりと、メッキの技術は日々進化を遂げています。そのため、今日におけるメッキは装飾だけでなく、防食や新たな機能を持たせることも目的となっており、今後もさまざまなシーンで活用できるようになるでしょう。 

制作:工場タイムズ編集部

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