現代の街並みにはコンクリートでつくられた建造物があふれています。
以前は「コンクリートジャングル」という言い方をされ、都会の冷たい風景の象徴として「コンクリート」という言葉が使われることがありました。
しかし、地震多発国の日本においては今や、建造物など一部の分野で、木材よりも丈夫なコンクリートが好んで使われる傾向があります。 コンクリートを原材料としてつくったものを「コンクリート二次製品」といいます。
今回は、日本の建造物を支えるコンクリート二次製品についてご紹介します。
コンクリート二次製品とは?
まずは、コンクリートとコンクリート二次製品の違いなど基本的な知識をお伝えします。
工事現場に近い道路では、円筒状の容器を回転させながら走る生コン車(アジテータ・トラック)と呼ばれる大型車両を見かけることがあります。容器の中には製造工場から出荷された生コンクリート(固まっていない状態のコンクリート)が入っています。容器が回転しているのは、運搬中に生コンクリートが固まらないように、常にかき混ぜているからです。
コンクリートの原材料はセメントや水、粗骨材(砂利)、細骨材(砂)などで、これに水分量や空気量などに影響を与える混和剤を加えて製造しています。コンクリートには耐火性・耐水性・耐久性に優れた性質があり、原材料の比率を変えて配合すれば、用途に合わせて自由に強度を変えることができます。そんな生コンクリートを工場で製品の形に加工したものや、工事現場に運搬して必要な形に成形した建造物などをまとめて「コンクリート二次製品」といいます。コンクリートは、製造が比較的簡単で寸法や形状の自由度が高いため、使い勝手が良い建材として多用されています。
目的別! コンクリート二次製品の種類
コンクリート二次製品にはいろいろな種類があります。代表的なコンクリート二次製品をご紹介します。
舗装コンクリート
コンクリートは、中に含まれる水分の量によって硬さが変わります。そのため鉄筋や鉄骨の入り組んだ構造の建造物には柔らかいコンクリートを使用し、それ以外の建造物では硬いコンクリートを使用するなど、用途に応じて使い分けることができます。道路やダムには構造に複雑さがなく、打設作業にも強力な機材を使えるため、特に硬い「舗装コンクリート」というものが使用されています。
高強度コンクリート
コンクリートは水分量を減らせば減らすほど硬くなって強度が増します。しかし、水分を減らすと、その分、流動性が落ちるため、水分量の少ない生コンクリートは複雑な構造の現場では隅々にまで行き渡らず、作業がしづらくなります。ここで活躍するのが混和剤です。流動性を保つ効果のある混和剤を用いて配合の調整をすると、高い強度と流動性を両立した「高強度コンクリート」をつくることができます。高強度コンクリートは、高層ビルや橋梁など、構造が複雑で高い強度を求められる建造物に使用されています。
補強材とコンクリート
コンクリートは上下から掛かる重さには強いものの、曲げたり引っ張ったりという力には弱いという弱点があります。そこで、補強材として鉄筋を併用した「鉄筋コンクリート」によって、弱点を補強しています。鉄筋は曲げる力や引っ張る力に強く、コンクリートがしっかり付着するように加工もしやすくなっているため、弱点を補うのにピッタリの補強材です。鉄骨を合わせて使用するとさらに強度が増し、耐震性にも優れた建物となります。
コンクリート二次製品の多様な使用例
上で触れた代表的な使用例以外にも、コンクリート二次製品はいろいろなところで活躍しています。
信号機・ポール
信号機や配電線用のポールなどは、設置する場所に応じた長さに加工してから出荷され、景観に馴染むように細くしたり、緑や茶色のアースカラーに塗装したりという工夫が行われています。木目調の外装をしたポールも登場しており、国立公園などで使用されていました。最近では街中にも設置されています。
巨大建築物
ダムや橋梁のような巨大建築物は、建築現場で生コンクリートを成形して建造します。コンクリートは耐久性の高さと施工のしやすさに加えて、コストが安いというメリットがあるため、巨大建築物の建材に打ってつけなのです。
道路・高架道路
荷重に強く耐久性に優れたコンクリート二次製品は、高架道路の支柱や側溝にも活用されています。現在、日本を含めた先進国の道路は、アスファルトで舗装されたものが一般的ですが、その他の国ではコンクリート舗装の道路もよく見られます。コンクリートは施工してから固まるまでに日数が掛かり、雨の日に滑りやすいといった欠点はありますが、アスファルトに比べて耐久性が優れているため、近年では日本国内でもコンクリート舗装を評価する動きが見られます。
日本の建造物を支えるコンクリート二次製品の魅力
コンクリートは、生コンクリートの状態からの施工のしやすさに加え、配合次第で用途や環境に合わせた性質のモノをつくれるというメリットから、多くの建造物に使用されています。コンクリートという言葉の響きにどこか都会の冷たさの象徴のようなイメージを抱いていた人も、コンクリート二次製品の優れたメリットを見て、少し印象が変わったのではないでしょうか?これから街を歩くときは、街中にどんなコンクリート二次製品があるのか、探してみると面白いかもしれません。
制作:工場タイムズ編集部