飛行機を間近で見ると、金属製なのに滑らかな丸みのある機体ということがわかりますよね。これは「板金」という技術でつくられた製品です。
また「板金」は自動車の製造現場で使う技術として知っている方もいると思いますが、それ以外の工場でも使われています。
ここでは、工場における板金の基本的な仕事内容や作業方法、加工している素材についてご紹介します。
曲げ作業
板金作業の一つである「曲げ」とは、製品となる素材を適切な形状に曲げる加工です。形状やサイズごとに、たくさんの種類があります。箱曲げやヘミング曲げ、R曲げ、Z曲げ、V曲げ、段曲げ、パイプ曲げなど多様です。
曲げ加工を利用してつくる製品は、細かな機械部品や住宅内装設備、自動車や船、飛行機に使われる部品、イスのフレームなど豊富にあります。つくるパーツによって、求められる加工技術が異なります。なかには、難加工材と呼ばれる加工がしにくい素材を使う場合や、切断加工といった別の加工法と合わせて曲げ加工を行う場合もあります。
曲げ加工は、手作業で行う場合と加工機械を使う場合の二つがありますが、工場や作業内容によって異なります。機械を使う場合は、アームロボットと呼ばれる人の腕の形をしたロボットを使って曲げ加工をします。量産が必要な製品をつくっている工場ではこうした機械を設備しています。アームロボットを使用するメリットは、品質を高く保った製品を低いコストで生産できる点です。
手作業だと寸法の調整に時間が掛かかるため、多くは専用の加工機械を使っています。機械ではできない細かな作業になると手作業で行います。
打ち出し作業
打ち出し作業は、ハンマーを使って板金を叩き、形状を整える成形作業です。曲げと違い、型を使わずに行う加工です。
製品に取り扱われる素材はアルミニウムやステンレス、チタン、銅、軟鋼などがあり、素材によってハンマーの種類を金属・ゴム・木製に使い分けます。打ち出し作業を行う対象が大きな製品になると、ハンマーの代わりに専用の機械を使用します。機械を使う際でも、最終的な調整は手を使うことがほとんどです。
打ち出しを行う製品は、列車のような大きなものから、数センチ程度の小さな部品までいろいろあります。どんな大きさの場合も自動化が難しい作業であるため、手を使って行うことが多くなります。
板金に使う素材の種類
板金にはどういった素材が使用されるのか具体的にご紹介しましょう。
鉄
素材の中でも、一般的に知られているのが鉄です。ただし、鉄の中でもいくつか種類が分かれており、代表的な素材としてはSPCC、SPHC、ボンデ鋼板、亜鉛鋼板などが挙げられます。
SPCCは曲げ加工用に利用されることが多く、安価なのが特徴です。SPHCは車両や電気器具などに良く使われます。そのほか、ボンデ鋼板は塗装がしやすい、亜鉛鋼板はさびにくいといった特徴があります。
アルミニウム
アルミニウムは、私たちの身のまわりに多く存在する素材です。加工をしやすい特徴があり、多様な製品に使われます。特に身近なものとしては、アルミ缶や1円硬貨などが挙げられるでしょう。
密度が低いため、非常に軽い材質で、鉄と比べても約3分の1の密度しかありません。そのほか、劣化しにくいメリットもあります。
ステンレス
ステンレスも多くの場所で使われている素材です。さびにくい特徴を持っており、シンクや包丁など、水回りに多く使用されます。また、熱さに良く耐え、溶接しやすい材質です。そのため、ほかの金属と金属を溶接する際、のりのように素材同士を繋ぐ素材として使われることがあります。
チタン
ステンレスが「さびにくい」性質を持っているのに対し、チタンは「さびない」という性質を持っています。さらに、強度が高くて、アルミニウムと同じくらい軽いなど、多くのメリットを兼ね備えた材質です。こうした特徴を活かして、ロケットの部品や人口骨、ネックレスやピアスといったアクセサリーに使用されます。
モノの形をつくりあげる板金
板金の作業は、大きく分類して「曲げ」や「打ち出し」という作業があり、扱われている素材はつくる製品によって大きく異なります。主に手作業で行う打ち出し加工に熟練する人の手さばきを実際にみたり、自動車の大きな部品を一瞬にしてつくりあげる曲げ加工を行う機械をみれば、板金の迫力を感じられるでしょう。Webサイトに板金の画像や動画がたくさんあります。興味がある方は一度ご覧になってはいかがでしょうか。
制作:工場タイムズ編集部