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仕掛品とは

仕掛品とは?半製品との違いや仕訳・棚卸資産として計上する方法

2018/12/12公開 / 2023/08/15更新

工場で働いている人や働いた経験を持つ人はもちろん、企業勤めをしている人の中でも「仕掛品」という言葉を聞いたことがある人はいるのではないでしょうか。

仕掛品の読み方は「しかかりひん」で、実際この仕掛品がどんなものか、分からない人も少なくありません。

今回はこの仕掛品にスポットを当てて、「半製品」と呼ばれるものとの違いや、棚卸資産の中に計上する方法などをご紹介します。

仕掛品とは?

仕掛品とは、「販売を目的とした製品を作るために製造を始めたもののまだ製造中のもので、さらに加工をしたりする必要があることからそのままでは販売できないもの」を指す言葉です。

一般的にどのようなものが仕掛品に該当するかというと、「画面が取り付けられていないスマートフォン」や、「焼く前に発酵をしているパン生地」のようなものが挙げられます。

このような例をあげると「工場などで作りかけのもの」を指す言葉と捉えがちですが、たとえばソフトウェアの開発で「デバッグなどテストが行われていないもの」などにも使われる言葉なので、作って販売されるものほぼすべてが対象になります。

仕掛品と半製品の違いとは?

仕掛品と似たようなものとして間違えられやすい言葉に「半製品」というものがあります。半製品なのだからまだ販売できるものではないし、仕掛品と同じと考えやすいですが、仕掛品と半製品は似て非なるものです。

というのも、半製品とは企業や工場で作られた「中間的製品」のことで、「そのままでも販売することが可能」なものを指します。しかし説明だけではピンときづらい部分もあるので、半製品も例をあげてご紹介します。

ある工場でオレンジジュースを製造していたとして、ジュース本体を作ってボトルに詰めるA工程と、ラベル貼りや箱詰めをして出荷するB工程があるとします。

この場合、「A工程が終わり、ボトルに詰められた状態のままB工程に進むため貯蔵されているもの」が半製品となります。ラベル貼りや梱包がされていないのでその工場の製品として完成はしていませんが、「オレンジジュース」として販売することはできるため「半製品」となり、”販売できないもの”を指す仕掛品との差は明確です。

仕掛品の計上方法

仕掛品がどのようなものかを見てきましたが、モノ作りの現場において仕掛品は必ず発生するものなので、しっかりとした計上を行わないと利益計算がおかしくなってしまうほか、税務調査で指摘を受ける材料になってしまうことも少なくありません。ここからは仕掛品に対して知っておくべき計上方法をご紹介していきます。

計上方法

仕掛品の計上は、決算時期のように在庫などを棚卸して資産や経費などをまとめるタイミングに合わせて計上するのが一般的です。しかし仕掛品は月ごとに見た場合には数量や原価が一定するものではなく、仕掛品の計上をきちんとせずいい加減にやってしまうと、その分決算などで産出される利益も正確なものではなく、あいまいなものになりやすくなるというデメリットがあります。

このため毎月ごとに仕掛品の棚卸を行い、それによって算出される仕掛品の原価計算も毎月しっかりとやる必要が出てきます。

費用ではなく流動資産(棚卸資産)として計上する

仕掛品は製品を作るために必要となる材料や経費などが発生しているものの、製品にはなっていないので当たり前ですが売上として計上することはできません。これは製造業に限らずサービス業でも言えることで、「作業は始めているものの終わっていないので売り上げが発生していない」場合も仕掛品と言うことができます。

費用だけかかって売り上げは発生していないのだから、仕掛品も費用として扱うものと考えるかもしれません。けれど仕掛品はその後の工程で製品となり、売上が発生するものです。お金に換えられるものは「資産」と言い換えられるので、費用ではなく流動資産(棚卸資産)として計上しなければいけません。

ここで費用として計上してしまうと、仕掛品の分だけ費用が増えるので決算時の所得分が減ることになります。企業や工場側からすれば所得が減れば負担しなければならない税金も減るのでいいことだと思いがちですが、これを行っていると税務署が行う税務調査で指摘されることもあり、その後流動資産(棚卸資産)に計上した場合、追徴課税金を支払わなければならなくなるほか、粉飾決算とみなされた場合は問題が大きくなってしまうこともあります。

売上の金額が仕掛品の金額より多い場合であればそこまで細かく考える必要はないことも多いですが、仕掛品の金額が売上より多い場合は可能であれば毎月決算の形をとり、きちんと計上したほうが影響も少なくなるので正確な計上をしたい場合にはおすすめの方法です。

仕掛品の原価の計算方法

仕掛品の計上をするときには原価の計算をきちんと行わないと最終的な売上原価を計算することが難しくなってしまいます。仕掛品原価を決める評価方法は複数あり、棚卸方法の届出にて選んだ方法で、月末や期末に行うのが一般的です。ここからは月末に計上する場合の計算方法を説明します。

仕掛品の原価を出すには、月初の仕掛品原価と月末の製造原価を「直接材料費」と「加工費」に分類します。それぞれの計算方法の中でひと月の直接材料費と加工費を算出し、この2つの数字の和が仕掛品の原価となります。

これをもとに、評価方法ごとの特徴と計算方法について見ていきましょう。

先入先出法(さきいれさきだしほう)

先入先出法は、モノ作りの現場だけでなくさまざまな業種においてポピュラーなもので、仕掛品においても当月の月初にあったものから完成させ、その後新しく当月分を投入していくというルールにもとづいて計算を行うものです。

先入先出法で直接材料費と加工費を算出する計算方法は次のようになります。

・直接材料費 = 当月分の直接材料費 /(完成品数量 – 月初仕掛品数量 + 月末仕掛品数量)× 月末仕掛品数量

・加工費 = 当月の加工費 /(完成品数量 – 月初仕掛品完成品換算量 + 月末仕掛品完成品換算量)× 月末仕掛品完成品換算量

ここでいう「完成品換算量」とは、当月に投入された加工費を求めるために換算されたもので、月初と月末の仕掛品に加工進捗度をかけることで算出します。この加工進捗度は完成品に対してどれくらい仕上がっているかで変わります。

この計算をすることで、どの程度の加工費を投入したかを割り出すことができるので、仕掛品の原価計算においては重要なものです。

平均法

平均法は先入先出法とは違い、月初に残っていた仕掛品も当月に投入した分もすべて合わせて平均的に製品が完成していくという考え方で原価を計算していく方法です。

・直接材料費 =(月初仕掛品原価 + 当月製造費用【共に直接材料費】)/(完成品数量 + 月末仕掛品数量)× 月末仕掛品数量

・加工費 =(月初仕掛品原価 + 当月製造費用【共に加工費】)/(完成品数量 + 月末仕掛品完成品換算量)× 月末仕掛品完成品換算量

後入先出法(あといれさきだしほう)

後入先出法は上でご紹介した先入先出法とは違い、当月分として投入する材料や加工費から先に使い、余裕があるようなら残っていた仕掛品を製品化させるというやり方です。後入先出法で原価を計算する場合には、生産状況による仕掛品の残量によって計算方法のパターンが変わっていきます。

後入先出法で計算する場合は当月に投入した分が残ってしまうと計算がややこしくなり、月初仕掛品まで着手することができれば計算式もやりやすいものになると言えます。

※2010年4月から廃止

最終仕入原価法

この評価方法からは、事業年度の単位で計算していきます。

最終仕入原価法は、期中の最後の仕入単価を仕掛品の評価額とする計算方法です。

企業会計基準には含まれていない算出方法ですが、法人税法上は適用されます。棚卸資産の評価方法の届出をしていない場合は、この最終仕入原価法で決算を行うことになります。

簡単な計算方法で価格が求められるので、経理に手間をかけられない小規模な会社や上場していない中小企業、重要性の低い棚卸資産の場合などに向いています。

売価還元法

売価還元法は、グループ分けした棚卸資産の原価率を、期末の売価合計額に乗じた価格で計上します。

売価還元法で棚卸資産の原価を出すには、まず、製品の種類ではなく、売価と利益の割合で求められる値入率などの類似性によって、グループを分けなければなりません。そして、棚卸資産のグループごとに出される原価率を、売価合計額に掛けて求めた額が、期末棚卸資産の価格となります。

原価率=(期首製品棚卸高+期首仕掛品棚卸高+当期製造費用)÷(当期製品売上高+期末製品売価+期末仕掛品売価換算額)

グループ分けの難しさはあるものの、比較的簡単な計算方法で、価格変動時も差が開きにくいといったメリットがあるため、取り扱う品が多い小売業などでもよく使われる評価方法です。

仕掛品の仕訳方法

仕掛品の仕訳方法は、状況によって変わります。

前期末に仕掛品棚卸高が計上されていた場合は、当期末の決算にも期首の仕掛品棚卸高として仕訳するのを忘れないようにしましょう。

材料費や労務費、経費といった勘定科目は、「直接費」と「間接費」に分けられます。製品を製造するため、直接的に関わったとはっきりしている費用は直接費、正確に把握することが難しいような間接的に関わった費用は間接費です。

直接費には原材料費や直接製造に関わった従業員の人件費などが当てはまり、「仕掛品」の勘定科目で振り分けます。一方、間接費は製造過程で必要な消耗品や減価償却費など、直接費には含まれないが製造に付随している費用を指し、「製造間接費」という勘定科目で仕訳します。

また、前期の仕掛品が当期に販売できる状態まで完成したら、「製品」に振替が必要になります。
一般的に製造業で必要になる仕訳の例は、下記の通りです。

仕掛品に対する製造原価や期首仕掛品棚卸高

・前期末の仕掛品棚卸高が10万円で、当期に50万円の材料費、30万円の労務費、20万円の経費がかかった仕掛品の仕訳

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
仕掛品1,100,000材料500,000
労務費300,000
経費200,000
仕掛品100,000
※仕掛品は借方が期末時点、貸方が期首時点の額

製造で材料を消費したとき

・原材料を50万円分、そのほか製造に必要な材料を20万円分使った際の仕訳

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
仕掛品500,000材料700,000
製造間接費200,000

製造に労働力を使ったとき

・製造のために工員へ賃金として25万円、そのほか事務員などに10万円支払った際の仕訳

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
仕掛品250,000労務費350,000
製造間接費100,000

製造に経費がかかったとき

・製造過程で電気代が30万円、そのほか減価償却費など15万円かかった際の仕訳

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
仕掛品300,000経費450,000
製造間接費150,000

仕掛品が製品として完成したとき

・250万円の製品が完成した際の振替

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
製品2,500,000仕掛品2,500,000

まとめ:仕掛品の計上は安定した経営状態を維持する上で必要なこと

いかがでしたか。今回は製造の過程の中で、まだ販売できるものではないものなどを意味する仕掛品について、販売が可能である半製品との違いや、費用ではなく資産として計上しなければいけない理由、さらには仕掛品の原価の計算方法などをご紹介してきました。

仕掛品を計上しないと月ごとに赤字が大きくなってしまったり、極端な黒字になったりと経営状態が安定していないイメージを持たれてしまうこともあります。細かい計算が必要なので手間はかかりますが、しっかりとした経営状態を保つためにも仕掛品の計上はきちんと行っていきましょう。

制作:工場タイムズ編集部

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