読書をするときやテレビをみるときは、明るすぎず暗すぎず、ちょうどよい明るさのところの方が目に優しいですよね。
それは、工場の作業でも同じ。工場には、作業をする上での適切な明るさが決められています。
そこで今回は、工場の「明るさ」についてご紹介します。
なぜ、明るい場所で作業をする必要があるのか?
明るい場所での作業は、手元や小さいものがよく見えるため、作業の効率が上がります。暗く見えにくい環境での作業は、見る力が低下します。効率が悪くなり、快適な作業の妨げになります。快適な作業をすることで、ムダな疲労を防ぎ、正確な作業をすることができます。また、工場内の明るさは、作業者の安全を守るためにも、とても大事なのです。
では、工場が「明るい」「暗い」というのは、どのように判断するべきなのでしょうか。視力や年齢などにより、作業者が感じる明るさの度合いは違ってきます。そこで「照度」という明るさの基準があります。光によって照らされている面が「どれだけ明るいか」を数値で表したものです。
しっかりチェック!作業の種類によって照度は違う
「照度」は、JIS(日本工業規格)により、作業や活動ごとに細かく決められています。明るさをLx(ルクス)という単位で表します。たとえば、家の部屋で読書をする時の照度は、300~750Lxが適切です。
ここでは、快適に読書ができる明るさを基準にして、作業別の適切な明るさをご説明します。工場内で行う作業の照度を、明るさの高い順に見ていきましょう。
精密機械、電子部品の製造、印刷工場での極めて細かい視作業
●1500~3000Lx
読書をする時の3~4倍以上の明るさが必要な作業です。一般的な文庫本や新聞などの文字は結構小さいですよね。 工場の仕事では、それらの文字よりも小さいもの を見る場合があります。例えば、製品に1mm程度のキズがないかどうかを目でチェックする作業など。作業の正確さが求められるため、しっかりと手元が見える明るさが必要です。
繊維工場での選別、検査、印刷工場での植字校正、化学工場での分析など細かい視作業
●750~1500Lx
読書をする時の2倍の明るさが必要な作業です。これらの作業では、ときには見落としそうな小さいもの を見つける必要があります。例えば、製品に印刷されている文字が間違っていないかどうかのチェックなど。
一般の製造工程における視作業
●300~750Lx
読書をする時と同じ明るさが必要な作業です。それほど細かくはない作業がこれに含まれます。例えば、車の部品同士を組立てる作業や、電子機器などの部品を包装するとき。その他組立や検査、試験、包装などの全般的な作業です。 家にいるときと同じくらいの明るさでできる作業なので、目が慣れていて、環境的にも作業がしやすい仕事です。
組立や検査、試験をともなわない作業
●75~300Lx
読書をする時より、少し暗めの環境でもできる作業です。文字や小さな部品を見るような仕事ではなく、できあがった製品を配送する準備など、段ボールに詰める大きめの包装や荷造り 作業が含まれます。細かいことはあまり得意ではない人でも、無理なくできる作業です。
荷積み、荷降ろし、荷の移動
●30~75Lx
読書をする時の約半分の明るさでできる作業です。これらの作業は倉庫内が中心です一般的に、力仕事と言われるものがこれらに含まれます。
明るさを保ち、快適に作業をするための対策
工場では作業しやすい明るさを保つために、さまざまな工夫をしています。実際に工場で行われている対策を、いくつかご紹介します。
LED照明
明るくしたい箇所に集中して光を当てることができるため、細かい作業をする場所に適しています。光にちらつきがないため目の負担が少なく、検査や選別などがしやすくなるでしょう。作業の効率が上がるだけでなく、蛍光灯よりも寿命が長い「すぐれもの」です。
スポット照明
精密機械などの細かい作業には、手元に光を当てるためにスポット照明を取り付けています。また、製品の最終チェックをするといった集中力のいる入念な作業でも、活用される場合が多いでしょう。
洗浄できる照明
照明器具に汚れがつくと、照度が落ちてしまいます。汚れやすい場所には、丸ごと洗える照明を取り付け、すぐにきれいにするようにしています。
照度を上げるカバー
蛍光灯を入れる「ルミキャップ」という特殊なカバーを使うことで、蛍光灯の光が反射鏡のように照射され、明るさがアップします。
正確さと作業の効率を上げるためには、明るさが重要!
工場では、正確な作業で効率を上げるために、明るさに気を配っています。明るさは工場で働く人にとって、とても重要なことなのです。正確で安全な作業をする上でも大切です。これは、工場だけではなく、ほかの職場や私生活にも言えること。自宅で本やテレビを見る際にも「本当にこの明るさで大丈夫?」と、照度の測定できる無料アプリなどでチェックしたり、部屋にあった照明器具の見直しをしてみては いかがでしょうか?
制作:工場タイムズ編集部