街中で見かけるタンクローリー。
あのタンクの中はどうなっていて、一体何が入っているのでしょうか?タンクの材質は何を使っていて、どんな構造になっているのでしょうか?
今回は、タンクローリーの基本的な知識から、運んでいる内容、内部構造など知られざる秘密をご紹介します。
タンクローリーって?
タンクローリーとは、液体や固体、気体を運搬するための特種用途自動車のことです。特種用途自動車とは、特別なものを運ぶときに使われる車のことです。フォークリフトやクレーン車のように作業機を取り付けた「特殊自動車」とは分けて表記されるのが一般的です。
タンクローリーは貨物自動車であるトラックの一種だといえば、よりイメージが湧いてくると思います。消防法では、危険物を輸送しているタンクローリーは「移動タンク貯蔵所」という位置付けです。そのためタンク上の見えやすいところに、危険物の種類や品名、最大数量が書かれています。
タンクローリーは、車種やタンク会社によって、荷台容量や寸法が違います。大型であれば、車両総重量は20,000kg前後と25,000kg前後の2つのタイプに分かれます。最大積載量は車両総重量に応じて10,000kg~15,000kgが目安です。タンク容量の平均は通常14,000L前後で、最小では12,000L、最大でも20,000Lです。一般家庭にあるお風呂の容量は200L前後なので、最大でお風呂100杯分を運ぶことができるということです。
運転をするための資格は、基本的には「大型免許」があれば大丈夫です。「中型免許」で対応できるものもありますが、大型免許を取得しておくと仕事の幅が広がります。さらに「けん引免許」や「高圧ガス移動監視者講習」「危険物取扱者」「毒物劇物取扱責任者」といった免許や資格を取得すると、運べる種類が増えます。
タンクローリーの構造とは?
タンクローリーとは、荷台部分にタンクを搭載しているトラックです。タンクの中には水槽が縦に並べられ何室かに分かれています。そのためガソリンや軽油といった種類の違うものを、室ごとに独立して積むことができます。構造的な部分を説明します。
タンク室
タンクローリーのような移動タンクには、設備や構造上の規制が定められています。容量は30,000L以下。材質は「鋼」「ステンレス」「アルミニウム」が多く、腐食に耐えられるように厚さ3.2㎜以上のものを使います。
また、最大4,000Lごとに仕切板が設けられています。2,000L以上のタンク室には、マンホールと安全装置、そして厚さ1.6㎜以上の防波板を設置しています。こうして仕切りをつくることで水槽がいくつか並べられている状況になり、違う種類のものを一度に運ぶことができるのです。
緊急停止レバー
荷おろし中に緊急事態が発生しても良いように、緊急停止レバーが設置されています。このレバーを引くことで全室のタンク底の弁が一度に閉鎖する仕組みになっています。車両火災時にはヒューズが切れて、自動的に底弁が閉まります。
混載看板
一度にいろいろな種類を積み分ける際、各室に何を積んでいるのかを表示する看板です。「ガソリン」「軽油」「灯油」「重油」など、積まれている油を明確に表記しています。「どこに何を積むのか決まっていないの?」と思う人がいるかもしれませんが、積む場所や順番には特に決まりがないため、運転手の判断で行われます。
運ぶもので変わる!タンクローリーの種類
タンクローリーは、何を運ぶのかでタンクの形や機能が変わります。そのタイプは主に3つに分類されます。
危険物ローリー
石油や劇薬などの危険物を運びます。タンクの材質は危険物の種類に合わせて鉄、ステンレスや強化プラスチックなどがあります。アスファルトや液体硫黄など空気の温度で固まってしまうものを運ぶ場合は、二重保温構造のタンクを使ったり加熱装置を設けているものがあります。
非危険物ローリー
セメントや食品、飲料などを運びます。なかでも給水車は、災害や断水が発生した際に活躍します。飲料水を衛生的なステンレスタンクで運んだり、高いポンプ圧を活かして高層階へ水をまくといった多彩な装備を持っています。被災地での小口給水(コップ1杯から水を供給すること)もできるような構造になっており、メンテナンス性も優れています。
高圧ガスローリー
その名の通り、高圧ガスを運びます。タンク本体は高圧ガス保安法に基づいた構造で製造されており、可燃性ガスは18,000L未満、アンモニアを除く毒性ガスは8,000L未満という制限があります。また何か問題が起きたときでも、付属の安全弁が作動し、速やかに圧力を降下させる機能が備わっています。
外からは見えないタンクローリーの万能構造
タンクローリーは、タンクの中にひとつの液体だけを入れてタプタプさせながら運んでいると思っていなかったですか?タンク内は、運ぶ内容や量によって何室にも分けられており、タンクの材質にもいろいろな種類があります。驚いた人も多いと思いでしょう。タンクローリーに興味が出てきた人は、どんな免許や資格を取ると何を運べるのかといったことを詳しく調べてみると、さらに興味が深まるかもしれません。
制作:工場タイムズ編集部