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ガス溶接

ガス溶接でステップアップ! すぐに実践できるガス溶接のコツとは?

2016/12/11公開 / 2023/07/07更新

溶接には大きく分けて「融接」、「圧接」、「ろう付け」の3種類の方法があり、このうち電気や火などの熱を利用して接合をする融接は、溶接の中でも特に代表的な手法のひとつです。

ここでは、この融接の中でも特に基本的な方法のひとつである「ガス溶接」について解説していきます。

ガス溶接の特徴

溶接とは、2つのものに熱や圧力を加えることによってその一部を溶かし、結合させる作業のことを意味します。その中でも特に熱を加え、2つのものを結合させる手法を溶接と呼び、さらにその中でもガスを使用して加熱をする手法をガス溶接と呼びます。この手法では、アセチレンやLPGといった可燃性ガスと酸素を利用して発生させた燃焼熱を利用して、加熱、および結合を行うという方法が一般的となっています。

ガス溶接には、同様に一般的にも広く知られているアーク溶接と比較して、結合を行う金属を溶かすのに長い時間がかかるという特徴があります。また、溶接時にはアーク溶接のように火花が散ることがないため接合箇所が見やすく、その状態をしっかりと確認しながら作業を進めることができるため、溶接不良などのミスを犯すことも少なくなるというのがメリットです。

また、ガス溶接の場合はガスの供給量の制御が簡単であるため、加熱具合の調整がしやすく、熱を加えすぎることによる部品の破損なども防ぐことができます。そのため、高熱に弱く割れやすいものや、薄いもの、溶け出す温度が低いものの結合にも向いているというのも大きな利点です。

その一方でアーク溶接よりも加熱に長い時間がかかる点や、ピンポイントでの過熱ができないため、必要のない箇所まで加熱をしてしまう恐れがあるという点はガス溶接のデメリットと言えます。そのため、これらのメリットとデメリットをよく理解し、ガス溶接とアーク溶接をうまく使い分けることもまた、効率的に溶接を行う上で重要です。

ガス溶接のコツと注意点

ガス溶接の基本的な手順は「ガスボンベの準備」、「トーチへの点火、溶接作業」、「消火」の3段階に分けることができます。続いては、これら各々の作業を行うにあたってのコツと注意点について解説していきます。

ガスボンベの準備

ガスボンベを準備する際には、爆発事故を防止するため、ガスボンベ自体を丁寧に取り扱うことが大前提として必要となります。そのためには、40度以下の室温で、なおかつ日陰になる場所で保管を行い、周辺に高熱を発する機器などを置かないようにしなければなりません。

また、ガスボンベは必ず立てた状態で使用するようにし、万が一作業中に倒れてしまったら、起こした後5分ほど時間を置いてから作業を再開するようにしてください。

トーチへの点火、溶接作業

ガス溶接に使用するトーチは作業ごとに形の異なるものに交換できるようになっているため、点火をする前に作業内容に合ったものが取り付けられていることを確認するようにしてください。

また、トーチに点火をする際には、ガスボンベのバルブだけを開いた後、専用のライターで火を付け、酸素ボンベのバルブを開き、火の大きさを調整します。

消火

溶接作業が終了したら消火を行いますが、この手順を間違えると非常に危険であるため、特に初心者の方は正しい手順をよく覚えておかなければなりません。

通常酸素がなければものは燃焼しないため、溶接作業終了時の消火においても、まずは酸素ボンベのバルブを閉め、その後ガスボンベのバルブを閉めます。

先にガスボンベのバルブを閉めてしまうと、酸素の供給は絶えず行われているため「逆火」という現象が発生してしまい、爆発事故などを招くことがあります。経験豊富な職人さんなどの場合、ススの発生を防ぐために先にガスボンベを閉めることもあるのですが、このようなテクニックを取得するためには十分な経験と技術が必要であるため、初心者は決して真似をしてはいけません。

ガス溶接作業のコツ

ガス溶接は、加熱を行う対象の厚さによって加熱方法を変えるのが作業のコツです。また、ガス溶接はアーク溶接に比べて作業時間が長くなる傾向があるため、加熱方法を対象物の厚さによって変えることで、効率的に作業を進め、時間を短縮することもできます。

溶接したい対象が厚い場合

ガス溶接は元来加熱に長い時間がかかってしまうため、対象物が厚い場合、その作業においてはさらに長い時間がかかってしまいます。

そのため、溶接する対象物が厚い場合は、できるだけ高温の火を当てるようにし、「白心」と呼ばれる火元近くにできる火の白い部分を対象物に当てると効率的に加熱することができます。

溶接したい対象が薄い場合

溶接する対象物が薄い場合、高温での過熱は破損を招くこともあるため、通常のガス溶接が最適です。この際には、ただ対象物を接合させるだけでなく、歪みや変形を整えながら溶接を行うときれいに接合させることができます。

ガス溶接作業主任者の資格をとってステップアップ!

ガス溶接作業を行うためには資格も必要となります。続いては、その資格の詳細について解説します。

ガス溶接作業に関係する資格

ガス溶接作業に関係する資格としては、「ガス溶接技能者」と「ガス溶接作業主任者」の2種類があります。

このうち「ガス溶接技能者」は、ガス溶接を行うすべての人に必要な国家資格であり、この資格を持っていなければガス溶接作業を行うことはできません。そのため、この資格はガス溶接作業を行う上での基礎となる資格となります。

一方で「ガス溶接作業主任者」の資格は、ガス溶接作業を行う際に指導者としてどのような作業をするのかを従業員に指示し、全体の作業を管理、指揮するために必要な資格です。この資格を取得するためには3年以上の実務経験が必要となるため、ステップアップとして、上位資格であり各作業所で1名の選任が労働安全衛生法にて定められている「ガス溶接作業主任者」の資格取得を目指す方も多いようです。

取得をする方法

「ガス溶接技能者」、および「ガス溶接作業主任者」の資格を取得する方法は以下のようになっています。

(a)ガス溶接技能者

「ガス溶接技能者」の資格を取得するためには、労働基準局長が指定した機関や団体にて学科講習1日、実技講習1日からなる2日間の講習を受講する必要があります。

このうち学科講習の内容は、「設備の構造・取り扱いの知識」が4時間、「可燃性ガスおよび酸素に関する知識」が3時間、「関係法令」が1時間となっており、ガス溶接に関する基本的な知識を学びます。また、実技講習は設備の取り扱いに関するものを5時間かけて行い、溶接、溶融、溶断などの作業に関わる基本的な知識も習得します。

以上の講習を行ったのち、1時間の修了試験を行い、それに合格すると「ガス溶接技能者」の資格を取得することができます。

一方で、これらの講習を受講するためには受講料が必要ですが、具体的な料金は協会や団体によって若干異なるため、自身で確認しましょう。また場合によっては受講料だけでなく、テキスト代や教材費が数千円必要となることもあるため、より安い金額で資格取得を目指したいのであれば、複数の協会や団体を比較するのもおすすめです。講習が開催される日程に関しても、協会、団体によって異なるため、その点もまた自身で確認するようにしてください。

(b)ガス溶接技能者

「ガス溶接作業主任者」の資格を取得するためには所定の試験を受けなければなりません。

この試験は6月と12月の年2回行われ、受験会場は各ブロックの安全衛生技術センターとなります。具体的な日程は毎年異なるため、その都度確認するようにしてください。また受験料は2018年度の試験では6,800円となっており、申込み時に支払うこととなります。

受験資格自体は設けられていないものの、ガス溶接技能講習を修了し、業務における3年以上の実務経験を積んでいることなどが資格取得の条件として設定されているため、この条件を満たさなければ受験をしても意味がありません。

試験にあたっては、「ガス溶接などの業務に関する知識」、「関係法令」、「アセチレン溶接装置およびガス集合溶接装置に関する知識」、「アセチレンなどの可燃性ガス、カーバイドおよび酸素に関する知識」が問われ、実務経験だけでなく十分な知識が求められます。そのため、資格取得のためには市販されている試験対策用のテキストの購入や、各協会・団体が行う対策講習などを受講するのも有効です。

その他の溶接方法

「ガス溶接技能者」、および「ガス溶接作業主任者」の資格を取得する方法は以下のようになっています。

電子ビーム溶接

電子ビーム溶接は真空状態で専用の電子銃を使用し、対象物に電子ビームを照射して溶接を行う方法です。この方法にはスピードと正確さの両面で大きなメリットがあり、また、真空状態で作業を行うため大気汚染の心配がなく、健康被害を招く危険性が少ないというメリットもあります。

レーザー溶接

レーザー発振器を使用し、対象物にレーザーを当て、溶接を行う方法です。この方法にはより細かい箇所の溶接を行えるというメリットがあり、高い精度が求められる作業に利用されることが多いという特徴があります。

まとめ

ここではガス溶接について、その特徴や作業を行う際の注意点とコツ、さらにはガス溶接に関係する2種類の資格の取得方法についても解説しました。

溶接工は製造業の作業現場で欠かすことができず、特にガス溶接とアーク溶接に関しては幅広い需要があります。それに加え、今後は上述した「電子ビーム溶接」や「レーザー溶接」などの新しい溶接方法が活用されることも多くなることが予想されるため、その技術を取得しておけば、多くの現場で重宝されることでしょう。

制作:工場タイムズ編集部

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