世界初のプロ麻雀リーグ「Mリーグ」が発足し、各方面で話題となっていることは前回ご紹介しました。今回はスペシャル版として、「Mリーガー」として活躍している俳優の萩原聖人さんが工場タイムズにご登場!
現在も俳優としてドラマや映画で活躍中の萩原さん。「プロになって麻雀でオリンピックを目指してるって本当?」「俳優は辞めちゃうの?」と、数多くの疑問をたっぷり聞いてきました。麻雀によって「頭がスッキリ」したり「仕事のスタイルが変わった」という、意外にも「仕事に役立つ」目から鱗のアドバイスが盛りだくさんです!
萩原聖人が語る、俳優業とプロ雀士「Mリーガー」の両立
——麻雀のプロになって、俳優業は大丈夫ですか?
萩原聖人さん(以下、萩原):ご心配ありがとうございます(笑)。2018年7月に、麻雀のプロが闘うリーグ「Mリーグ」が発足すると聞いてすぐ、プロになろうと思って行動に移しました。麻雀の魅力を大勢の方に知ってもらいたいという気持ちはずっとあったので、迷いはなかったです。もちろん俳優業はそのままで。
とは言っても、「Mリーグ」に出場するには7つのスポンサー企業が持つ各チームから「うちに所属してくれ」とお呼びがかからないとダメなんです。プロ野球と同じようにドラフト会議で選手が指名されるシステムだったので、(現在所属している)「TEAM RAIDEN / 雷電」からお呼びがかかるまでは、落ち着かなかったですよ。ちょっと緊張しましたもん。呼ばれなければ、選手である「Mリーガー」になれないわけですからね。
無事、指名されてからは俳優業もますますがんばらないといけないなと気を引き締めました。俳優業のファンの方にも喜んでもらいたいので、両方に全力投球です。
——俳優業とMリーガー、気持ちの切り替えはどうしてますか?
萩原:やっぱり気持ちの切り替えは難しい時もありますね。麻雀の成績が悪かった日の翌日に(ドラマや映画の)撮影があると、演技の時間以外はぼんやりしたり…。「キチッキチッと完璧に切り替えてやってます!」と言ったとしたら、まあ正直ウソですね(笑)。
だけど、どちらも現場に行って、本番となれば集中しています。現場の空気って、人が作るわけですから、周りのスタッフさんや共演者が発散している空気を吸えばちゃんと切り替えられます。Mリーグの試合会場にも独特の空気が流れていますから、その点は同じ。モヤモヤしてるとしたら、移動中だけですね。
「朝から完璧に切り替えてやってます」って言ったほうがかっこいいし好感持たれると思うんですけど(笑)、なかなかね。Mリーグ、俳優業それぞれ100%注ぎこむからこそ、簡単にはいかないと思っています。自分の頭の中だけでソッコー切り替えられちゃうというのも、なんかイヤですね僕は。
萩原聖人の胸にこみあげる、熱い思い
——Mリーグの魅力ってなんですか? オリンピックを目指すって本当ですか?
萩原:サイバーエージェント社長であり、Mリーグのチェアマンを務める藤田晋さんが(Mリーグを)発足した意図そのものが、Mリーグの魅力だと思います。その意図とは、麻雀のオリンピック正式種目化を目指すこと。すごいですよね、麻雀の魅力を広めるために、Mリーガー(選手)全員が世界を視野に入れながらしのぎを削るんです。そのことを思うだけで胸に熱いものがこみ上げてきますし、僕ができることはなんでもやるぞという覚悟ができています。
オリンピック種目に選ばれるために多くの人に応援してもらうには、まずは認知度を上げることが大事です。その役割としてMリーグがあります。そのなかで僕ができること、どう見せるか、どう打つか、を毎日考えています。いろんなハードルをクリアしてオリンピック種目となったとき、僕はどういう闘いをするべきなのか? そんな先のことまで意識してやっています。
——「Mリーグ機構」から、麻雀はマインドスポーツ(頭脳運動)と聞きました。
萩原:麻雀はスポーツだ、って言われたら、皆さん「全然フィジカル使ってないじゃん」とツッコミを入れると思います。それは理解できますが、マインドスポーツ(頭脳運動)として「スポーツ感」があるということを、たくさんの人に知ってもらいたいです。とりあえずは「感」でいいので(笑)。「Mリーガー」になったからには、麻雀の未来、Mリーグの未来をより良くするために活動をしていきたいと思ってるんです。
今日勝つとか、今年勝つとか、にこだわりすぎない。スタンドプレイになってはいけないので、チームの方針とズレていないか確認して、僕の狙いを理解してもらうところからチャレンジしてます。その点も、スポーツと一緒ですよね。
麻雀未経験者にも知ってもらいたい、意外な麻雀効果
——麻雀は、仕事やプライベートでどんな効果がありますか?
萩原:既に社会人として日々の仕事が忙しく、麻雀をしたことがない人にも興味を持ってもらえるように頑張っています。麻雀って学生の頃に経験していないと、なかなかハードルが高いですもんね。
でも、仕事に役立つこともあるんですよ。初心者でも一生懸命打つと、他のことを忘れて夢中になれます。自分の手牌と相手の捨て牌を見て即座に動きを判断しないといけないので、集中力が途切れて気が散ったら負けに近づきますからね。
「麻雀脳」になるという感じかな。集中力を高めたり、集中できる時間を増やす訓練になると思いますよ。普段の生活で脳をフル回転させて集中する機会はあまりないでしょう? 残業できないときに終わらせなきゃいけない仕事があるときとか、大事なプレゼンとか、ここぞっていうタイミングで集中できる効果も、あると思います。
麻雀を打ち終わって集中モードから解放されると、不思議と脳内をリセットすることができるんですよね。僕なんか、ただ台本を読み込むより、麻雀を1回やった後のほうが長台詞がスーッと入ってきたりするくらい、役に立ってくれてます。
——麻雀はストレスがたまりませんか?
萩原:麻雀で真剣勝負をして、まあ負けたとなったらストレスが襲ってくることもありますけど、これがまたね、脳には良い刺激だと思っています(笑)。勝負事なので、自分が失敗したからだな、と思えますしね。仕事相手との人間関係や、蓄積した疲労などから生まれるストレスとは違う種類のものだと思います。むしろ、仕事のストレスに押しつぶされそうになったときに、麻雀で気分転換してもらいたいくらいです。勝っても負けてもスッキリしますから。ほどよく疲れてよく眠れて、明日も仕事をがんばれるはずです。
——麻雀の打ち方で、相手の人間性や仕事のスタイルなどが分かりますか?
萩原:打ち方に人間性がにじみ出てしまうのも麻雀のおもしろいところです。僕も対戦相手に対して「この局面でなぜその牌を切るか!? どんな見通し?」「うわ~、普段の仕事でもそんなやり方してるの!?」って心の中で叫んでるときありますもん。
相手が例えば上司だったら、簡単に作れる手でアガらず夢を追う姿を見せて欲しいですよね(笑)。無謀でも堅実すぎてもかっこ悪かったりと、場面場面の打ち方で性格がバレる。対戦で得たパーソナル情報を仕事に活用するとおもしろいかも。
僕はまあ、かっこつけすぎかもしれないですけど、やっぱりファンが喜ぶ打ち方に徹したいです。例えばその場だけの勝ちにこだわらず、アガるにはものすごい幸運に恵まれないと難しい手でも、あえて狙っていくとか。そういう工夫をしようとしてもかなり難しくて、結果がついてこないときもありますけど、それでも勝って“魅せ”ていきたいです。
——麻雀が分からないパートナーや家族との付き合い方って、ありますか?
萩原:麻雀って、パートナーに理解してもらいにくいんです。麻雀好きの人の最大の悩みかもしれない。とにかく対戦時間が長いですからね。
1試合を「半チャン」と呼ぶんですが、だいたい1時間半くらいかかるんです。1試合だけで解散というのはなかなかレアですよね。4人集まって席についたら、5~6時間は打つのが普通。でも5~6時間って、飲みに行ったとしたら2軒ハシゴできちゃいますから、麻雀をやらない人からすると“長すぎる”んです。例え2時間で切り上げても、ダークなイメージがあって良い趣味と認めてもらえないのが痛いところ。逆説的に言えば時間を忘れるくらい面白いゲームということなんですが…(笑)。
僕からの提案は、「今日は麻雀行かせてくれ。週末はディズニーランドに連れていくから」とか、パートナーや家族との時間も大事にすること。麻雀で不在にする代わりの時間をちゃんと提供すること。自分だけ楽しむのはNGです(笑)!
【必見! おまけコラム】
疑似体験!『対面(トイメン)はプロ雀士・萩原聖人!』
取材現場に麻雀セットを持ち込んだ工場タイムズ編集部。図々しくも笑顔の萩原聖人さんにお願いして、夢のバーチャル対戦を実現しました!
題して「疑似体験! 対面(トイメン)はプロ雀士・萩原聖人!」。選ばれた者しか味わえない、特等席にお連れします。
雀卓に向かうオーラが違う、Mリーガー・萩原聖人!
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取材後、麻雀牌をさわりながら「こうやってちょっと牌に触れただけで『麻雀って楽しい』って思えます」と語ってくれた萩原聖人さん。楽しいだけじゃなくて脳トレにもなるしストレス解消にもなるマインドスポーツなので、全力でその魅力を伝えていきたいと、意気込みます。何より、集中力も増すし脳内がリセットされるので、麻雀は仕事に大いに役立つと。
そのためには、普段忙しくて麻雀未経験者の社会人を巻き込んでいくことが必要で、麻雀のイメージアップになることは努めてやっていきたいそうです。
取材の最後に「麻雀ファンの人は麻雀未経験者の人を誘って観戦してください。裾野が広がるよう、一緒に麻雀界を盛り上げましょう!」とメッセージも。今後飛躍していく「Mリーグ」と萩原聖人さんから、しばらく目が離せそうにありません!
取材・文/志野順子(コレロ)、撮影/五十川満、編集プロデュース/藤田薫(ランサーズ)