体の疲れがたまるのはツライけど、心の疲れが癒せない日々はもっとツライ。そんな時、夜のヒーリングスポット「スナック」に行ってみませんか?
お笑い芸人で全日本スナック連盟会長を務める浅草キッドの玉袋筋太郎さんに、スナック初心者への「超入門」をガイドしてもらいました。
「ヒーリング? 癒される前に、入りにくいわ!」と嘆く工場タイムズ読者の皆様! これさえ読めばスナックの重い扉も開けやすくなるはずです!
玉袋さん。そもそも「スナック」って、どんなとこですか?
簡単にいうと、オールインワンの“大人”の社交場だね。大人っていうのは、社会人になりたての角が取れてない人たちのことじゃなくて、人間として揉まれた経験のある人たちのこと。
バーでも居酒屋でもなくて、ママがいるからってキャバクラやクラブとも違うし、マスターが「大将っっ!」て呼ばれる小料理屋とも違う。そういう飲み屋のいろんな要素を持っていて、基本はママかマスターがいて、“大人”のお客さんがいて、社交してる店ってことかな。
全国に7万軒あると言われてるから、コンビニより多いよね。オフィス街の裏道や田舎の住宅街とかあらゆるところに存在していて、それだけ需要があるってことだよね。
疲れている人にとっての、スナックの魅力って何ですか?
「癒し効果」が、間違いなくあるよね。ママみんな離婚してるからさ(笑)。いや、正確にはみんなじゃないけど、スナックやるきっかけが離婚っていうママが多いのよ。1000軒回ったオレの体感だけど、9割は離婚経験ありだね。
だから、素敵なんだよね。生きるために一生懸命だから。スナックで大儲けしようというんじゃなくて、身の丈で生活しているところに人間っぽさがある。それぞれのお店にそれぞれの物語があるっていう感じで、魅力があるんだ。
ママと話すだけで、ホッと一息つけたり、元気をもらえたりすると思う。カラダもココロも疲れて入ったスナックで、ママの愚痴を延々と聞かされて客の自分がママを励まして帰るなんてこともあるけど、それも明日のやる気につながったりするんだ。スナックあるあるだよ。
セラピー効果が「ママ+他のお客さん」で倍増!?
全然知らないお客さん同志を相席にしちゃうママも多いよね。もちろん空気を読んでやってるから、場が盛り上がるんだわ。
「相席屋」なんていうのが今あるけどさ、それとは全然違うよね。下心はないしさ。お客さんの年齢層が幅広いし職業もいろいろだから、自分の悩みがさ、そこにいるお客さんの数の分だけ薄まる感覚を味わってほしいよね。
ぶっちゃけ悩みを打ち明けて、笑い飛ばされることもあれば、親身に相談に乗ってもらえることもあるし、説教されることもある。どんなにつらい悩みがあってもさ、だんだん酔ってきて、帰るころには締めのラーメン食べに行く元気が出てたりするもんなんだよな。
力関係がない、裸の心で交流できるレアスポット!
高齢者がいっぱい行っているスナックだと、生存確認の場でもあるわけよ。「あのひと来なくなったな」って、お客さん同士で話題になる。あとで大病したって聞いて、そのひとのこと気にかけるようになったりね。
オレはいつも言ってるんだよ。スナックは江戸時代にあった混浴のシステムじゃないかなって。男女関係ない。百姓だろうが殿様だろうがお侍だろうが裸で入れる。みんなでくつろげる場所。そこには力関係がないという素晴らしさがある。
実際に服脱ぐわけにいかないから、「ぬるめの半身浴」感覚で、パワースポットに行くかのようにスナックを訪れてみてよ。
安心できるスナックを見極めるには???
長くやってるとこがいい! 古くから営業してるってことは、それだけ信頼されているということ。古いスナックは扉の外にボックス型のライトを出していたり、看板が色あせてたりするからすぐわかると思うよ。
LEDライト使って玄関を飾ってるようなところは、新しい店だよね。グルメサイトに「パブ」や「バー」ジャンルで載っていることも多い。そのほうが「安心」だと思うなら、スナック初体験はそういうお店でもいいかも。オレ的なオススメは、絶対、老舗だけどね!
店の外にある情報をチェックせよ
チェックその①「会員制プレート」
よく質問されるのが「会員制」のプレートね。あれは、セコムやアルソックのシールみたいなものと思って大丈夫。「危険なお客さん、入ってこないでね」っていう意思表示をしているので、スナック初心者が扉を開けて断られることはまずないよ。
チェックその②「アルバイト募集の紙」
お店の扉にアルバイトレディー募集の紙が貼ってあると、そこからいろんな情報が読み取れるからおもしろい。時給の3.5倍くらいが一人当たりの飲み代に相当すると思っていいよ。時給1000円って書いてあったら客単価3500円くらいかなと。
年齢が「50歳まで」って書かれてたら、ママは還暦間近かなと。募集の紙がカレンダーの裏だったりすると、さらにいい感じだね(笑)。
チェックその③「聞こえてくる歌声」
カラオケが外まで聞こえてきたら、耳を澄ましてみて!
テレサ・テンを中国語で歌ってたら中国人のアルバイトレディーが、マライア・キャリーを英語ですっげえ上手く歌ってたらフィリピン人のアルバイトレディーがいるってわかります。聞いたことない演歌が流れてきたら、けっこうな老舗だねぇ。
チェックその④「自転車」
店の外に止めてある自転車に、子供用の荷台が付いてたら、ママかアルバイトレディーがシングルマザー。間違いなし(笑)。
チェックその⑤「昼にわかるチェックポイント」
昼のうちから場当たりするのもオススメ。空き瓶で査定できるからね。
山崎だとか響とかゴロゴロあったら、スナックでは最高級ランク。鏡月がいつも数本出てるとしたら、安くてにぎわってるお店だとわかるよ。
チェック「まとめ」
プロファイリングは大事だけど、おのれの直感を磨くことも大事。
五感を研ぎ澄まして、スナック初体験にチャレンジしてみてよ!
玉袋筋太郎さんにスナックに関する長年のスナック訪問に基づくお知恵を拝聴し、スナック未経験者が「スナックの扉を初めて開ける」ときの心構えまでを伺いました。
ひとたびお店に入ればママや常連さんに癒されたり、混浴感覚でパワーチャージさせてもらえたりと、疲れたときの救世主になってくれそう!
次回はいよいよ「お作法編」。引き続き玉袋さんに、スナックでの心構えやマナー、真の楽しみ方を伝授してもらいます!
玉袋 筋太郎(たまぶくろ・すじたろう)
お笑いコンビ、浅草キッドのメンバー。全日本スナック連盟会長。訪れたスナックの数は1000軒を超え、スナックの探求をライフワークとしている。近著に「スナックの歩き方」(イースト新書Q)、「疾風怒涛!! プロレス取調室」(毎日新聞出版)、「粋な男たち」(KADOKAWA)など
取材・文/志野順子(リヴァーライズ)
イラスト/コハラアキコ
写真/アナザーチョイス