飛行機って何でできている?
飛行機は本当に「鉄の塊」なのでしょうか?まずは飛行機をつくっている素材について説明します。
実は「鉄の塊」ではない?
厳密に言うと、飛行機は「鉄の塊」というよりも「金属の塊」です。機体の構造を見ると、鋼鉄の割合は全体の10%程度です。では機体が何でつくられているかというと、総重量の約70%がアルミニウム合金、約15%がステンレス鋼、残り約5%がチタンやプラスチックです。
どんな金属を使用しているの?
機体の大部分を占めているアルミニウム合金は、一般的に「ジュラルミン」と呼ばれています。ジュラルミンはアルミニウムが約95%を占めていて、あとは銅、マグネシウム、マンガンなどでできています。特徴は軽量でありながら丈夫なことです。近年では、マグネシウムの量を増加した「超ジュラルミン」や「超々ジュラルミン」と呼ばれる新素材も登場しています。
飛行機一機に使用される部品は600万個
ジャンボ機であれば、およそ600万個の部品が使用されています。自動車一台の部品数が2万~3万個ですから、自動車の約300倍の部品が使われていることになります。また、航空会社には予備の部品が1000万~2000万個くらい保存されています。運行スケジュールに影響が出ないよう、故障するとすぐそれらの部品を使って修理しているのです。当然、部品調達や保管に大きな労力と費用がかかっています。
高い品質管理だからこそ安全!
部品数の多さもすごいですが、部品の品質についても厳しく管理されています。予備も含めると莫大な数になりますから、その管理はどの航空会社でも力を入れて行われています。
すべての部品で認証取得
飛行機の部品の販売は、航空当局や航空会社の認証のもとで行われます。現場で勝手に部品の調達や加工ができないよう、業務の全プロセスがすべて細かく文書化されています。新たな部品を使いたいときや業務プロセスを変えたいときは、認証を受けるとできるようになります。そうした管理システムが飛行機の安全性につながっているのです。
同じ部品を20年以上つくり続ける!
飛行機の部品産業の特徴は、市場規模が小さく、開発サイクルが長く、製品の移り変わりが遅いことにあります。そのため一つの部品をつくるのに長い時間がかかるものの、一度開発に成功すれば、その飛行機が使われる限り同じ部品が使われ続けます。同時に、同品質の部品をつくり続けられる体制を工場側が整えれば、均一な品質の部品を供給し続けることができます。
ボーイング787から見る部品の開発と新素材
技術の進歩に伴い、進化を続けているのは航空機産業も同じです。なかでも、最新鋭機のボーイング787で新しく取り入れられた部品や素材に多くの注目が集まっています。同機は200~300人乗りの中型機で、機体の35%、エンジンの15%を日本企業が供給しています。
機体
注目は、機体に使用されている日本製の「炭素繊維複合材(カーボン)」という新素材です。炭素繊維とは、毛布やセーターに使用されているアクリル繊維を約1000度の高温で熱処理して炭化させた素材です。自動車レースのF1カーのボディに使用され、有名になりました。炭素繊維と樹脂を重ね、焼き固めたものが炭素繊維複合材で、強度は鉄の9倍とされます。これまで機体に使用されていたアルミ合金よりも軽くて強いので、燃費が20%向上するという驚異的な進化を見せています。
エンジン
エンジンも機体と同様に大きな進歩を遂げています。高性能なだけでなく、環境にやさしい工夫がされています。たとえば、エンジンから噴出される空気の排出口がノコギリの歯のようにギザギザになっています。この形のおかげで排気流をうまくかき混ぜることができ、騒音を下げることに成功しました。これまでの飛行機と比べ、離発着時の騒音が60%以上カットされています。
駆動系装置
翼を動かす油圧シリンダーやブレーキ、エンジンスターターといった駆動系装置(エネルギーを加えることで何かを動かす装置)が、787では油圧から電気に変わりました。これによって、オイル漏れなどの心配がなくなり、メンテナンスが簡単になりました。また油圧の配管がなくなって細い電気ケーブルになったため、メインギア(飛行機が着陸するときに出てくる車輪や支柱のこと)などがシャープな印象に変わったのも特徴です。
コックピット
これまではアナログ計器が残っていましたが、787においては大型の液晶パネルにすべて取り換えられ、完全なデジタル・コックピットになりました。液晶パネルは、パイロットの正面に2枚、中央に1枚の計3枚が装備されています。
目に見えない多くの部品が最新型の飛行機を生む!
多くの乗客乗員の命を乗せて運ぶ飛行機。その安全性は、厳しい品質基準をクリアしたたくさんの数の部品が支えています。また、最前線の技術開発によってつくられた新素材がもたらす機体の軽量化や燃費の向上など、航空機産業は目覚ましい進歩を遂げています。飛行機の機体工場を見学できるところもありますので、興味がある人は一度行ってみてはどうですか?
制作:工場タイムズ編集部