注文請書(ちゅうもんうけしょ)とは?注文書との違い
「注文請書」とはそもそもどのようなものかというと、注文書を「受け取った受注側」がその注文を「引き受ける意思を表す」ために発行する書類です。一般的に「発注書」とも呼ばれる注文書は、注文をする発注側が発行するものです。
このため注文書と注文請書は同一ではなく、発注側と受注側がそれぞれ注文書と注文請書を発行し、それぞれを相手に渡すことで契約が成立するという流れになっています。
注文書と注文請書を使う契約には流れがあり、必ず注文書が先に発行されます。これは発注側が発注する意思を注文書という形で表明していないにもかかわらず、受注側が注文を受けたという注文請書が先に発行されたとすると、契約の流れとしておかしくなってしまうためです。
注文書と注文請書で契約するメリット
注文書と注文請書のやり取りによって契約をするメリットは、それぞれの意思を示せることと、注文した日付や品物の種類や数、納期などを意味する「取引内容」、さらには取引金額や支払い方法などが明確に形として残ることが挙げられます。
実際の業務上では、発注側が注文書と同時に注文請書を発行し、受注側がそれを確認して捺印して先方に送り返すという手法も行われており、双方の取引に対して合意できていればこのやり方でも問題はありません。
注文請書というと、企業でのやり取り以外では見ることがないと思われがちです。しかし、たとえばamazonや楽天などをはじめとするインターネットショッピングをしたときに、自分が指定したメールアドレスに注文請書のようなメールが送られてくるように、日常生活の中でも多くの場面で使われている文書でもあるのです。
注文書・注文請書の書き方
ここからは注文請書にどのような項目を記載すればいいのか、注文請書の書き方についてご紹介していきます。
基本的に、注文請書の内容は注文書と似たような記載項目になります。「発注内容を受けて、この依頼を受注する」という意思表示の書面となるので、双方の内容には大きく差が出ることはありません。
注文請書はさまざまなテンプレートが存在し、そこから修正を加えてその企業オリジナルの注文請書を発行している企業もありますが、注文請書に必ず表記しなければならない項目というものがあります。
発行日
注文請書は契約書に該当するものなので、発行日を記載することは契約を締結する上でとても重要です。一般的には、注文書に書かれる発行日(注文年月日)と発行日は同じ日付になります。
発注者の名前または会社名などの名称
注文請書を作成するときには、受注側が作る場合は注文書に発注側の情報が書いてあるので、その名称をそのまま使用します。
また発注側が注文書と注文請書をまとめて作成する場合は、発注側である自分の情報がこれに当たります。
受注者の情報
注文請書を作成するときは、渡す相手である発注側については名前などの名称だけで構いませんが、受注者の情報については名称だけではなく住所や電話番号も記載しなければなりません。また必要性に応じて、承認者の氏名や役職の表記が必要になることもあります。
契約内容
注文請書は「発注側の依頼を受ける意思を示す」ために発行する書類なので、注文を受けた内容や数量、単価といった基本情報はもちろん、納期や金額も税抜き金額、税込み金額など契約に関わる内容の記載も必要です。契約内容は業種によって大きく異なり、土木業など工事が含まれる注文請書であれば、工事内容や場所、着工日なども記載します。
支払い方法の明記
注文請書は当然ながら「契約の成立を証明する書面」のひとつなので、支払い方法などを記載することが多いです。一方、支払い期限に関しては、取引が頻繁に行われている企業間などでは注文請書に記載がなくてもお互いが了解していることが多く、このような場合は記載されないこともあります。
注文請書と注文書の受け渡し手順
注文請書は、発注者の依頼内容が記された注文書をもとに作成される書類です。前述の通り、2つの書面の順序としては、注文書(発注書)を受け取ったあとに注文請書(発注請書)を渡す段取りになります。
取引全体で見ると、
- 見積書【受注者】
- 注文書【発注者】
- 注文請書【受注者】
- 納品書【受注者】
- 受領書【発注者】
- 検収書【発注者】
- 請求書【受注者】
- 領収書【受注者】
という流れで書面を作成します。
場合によって、一部の書面が省略されたり、ほぼ同時に取り交わす書面が出てくるなど、多少の違いはありますが、商取引の手順はこのような書面の受け渡しで進むことが一般的です。
発注者が、受注者に依頼した見積書と注文したい内容が見合っているか検討し、正式に発注する際に注文書を作成します。注文書を受け取った受注者は、注文内容が自社で対応可能かを判断し、注文請書をもって受注する意思を伝えます。
その後は、商品やサービスの納品や支払いの都度、それぞれに応じた書面で双方のやり取りを形として残し、取引完了になります。
注文請書に収入印紙は必要?
注文請書を発行するにあたって、収入印紙を貼付する必要があるのかについては、必要とする意見もあればいらないという意見もあり、意見が分かれているのが実情です。
では、実際注文請書に収入印紙は必要なのでしょうか。結論から先に言ってしまうと、収入印紙を注文請書に貼付する必要は「あることが多い」です。
これは印紙税法という法律の中で基本通達第3条に、「文書全体をひとつとして判断せず、名前などにも左右されず中に記載されている内容など実質的な意義に基づき判断する」という条文があります。
少し意味がわかりづらいかもしれません。これを注文請書に置き換えた場合には「注文請書」という名前は考えず、発注側から注文書が届くことにより契約の流れが開始し、受注側が注文請書を発注側に渡すことで契約が締結されます。
そのため、注文請書には実質的に「契約の成立を証明できる文書」ということができ、印紙法上において収入印紙を貼る必要のある課税文書となるのです。
注文請書に収入印紙が不要な場合
注文請書は課税対象の書面となりますが、例外として非課税または課税文書にあたらない場合もあります。
収入印紙が不要になる要件は、
- 請負契約の記載金額が1万円未満の場合
- 請負契約の記載金額が1万円未満の場合
- 注文書など、注文請書以外の書面を契約書として印紙税を納めている場合
- 紙の書面ではなく、メールなどで電子化した注文請書を送付する場合
などがあります。
1については、請負契約の書面自体は課税文書であるものの、契約金額1万円未満は非課税となります。
2〜4の場合は課税文書に当たらないため、印紙税を支払う必要はありません。
物品加工などの契約は課税文書の対象となりますが、2のようにすでにできているものを継続せず売買する取引は、印紙税の課税対象となりません。
3は、契約書が課税文書の扱いになる取引の場合でも、どの書面をもって契約成立とみなすかによって、収入印紙の必要性の有無が変わってきます。
一般的には、注文請書の交付が双方の意思表示が完了した契約成立とみなされ、契約書として課税されます。ですが、注文書の交付で契約成立と双方で取り決めた場合などは、注文書に課税文書として収入印紙を貼付するので、注文請書の交付をするとしても重複して印紙税を払う必要はありません。
4の場合は、「注文請書をFAXで送信する、または電子メールで送信した場合」には、収入印紙は貼る必要がないと定められています。
なぜこれが収入印紙を貼らなくていいのかというと、国税庁からの文書回答事例の中に「電子メールの送信は、FAXで送信したものと同様に課税文書を作成したことにはならないので、印紙税の課税原因は発生しない」という取り決めがあるからです。
このため取引回数が多く、また取引金額も大きい企業の場合はこのルールを活用し、PDFをはじめとする電子文書に、タイムスタンプや電子署名を付与する形で契約を締結する事例が増加しています。
このほかにも、様々な条件によって課税・非課税が変わってくるので、詳しくは国税庁のホームページも参考にしてみてください。
注文請書に収入印紙を貼る場合の金額って?
印紙法において、収入印紙の額は取引金額によって変動することになっています。これを具体的には、取引金額が1万円未満であれば非課税となり、収入印紙を貼付する必要はありません。
「注文請書に収入印紙が不要な場合」で前述した通り、1万円未満は非課税となりますが、1万円以上になれば収入印紙を貼付する必要が出てきます。100万円以下で200円、100万円以上200万円以下であれば400円、200万円以上300万円以下であれば1000円というように、取引金額が大きくなれば大きくなるほど収入印紙額も増えていきます。また取引金額の記載がない場合は、200円の収入印紙を貼付しなければなりません。
記載された契約金額 | 税額 |
契約金額の記載なし | 200円 |
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超え200万円以下 | 400円 |
200万円超え300万円以下 | 1,000円 |
300万円超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円超え1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超え5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超え 1億円以下 | 6万円 |
1億円超え5億円以下 | 10万円 |
5億円超え10億円以下 | 20万円 |
10億円超え50億円以下 | 40万円 |
50億円超え | 60万円 |
ここで重要となるのは、取引金額が税抜きの金額なのか税込みの金額なのかという点ですが、「消費税の金額が明らかな場合」は消費税の金額は取引金額に含まれないという決まりがあります。「注文書・注文請書の書き方」でも触れたように税抜き金額と税込み金額の両方を注文請書に記載しておけば消費税額が明らかにわかるので、税抜き金額を取引金額にすることができます。
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注文請書は簡略的な契約を結ぶときにはとても重要なもの
今回は、注文書と対になり契約を成立するために交わされる注文請書がどのようなものか、その書き方や必要性の有無が問われることの多い、注文請書と収入印紙の関連についてなどをご紹介してきました。
注文請書というと一般的に馴染みがないものに聞こえますが、インターネットショッピングなどでも注文した後で受注書がメールで送られてくるように、日常生活の中で多くやり取りされている文書のひとつです。
しっかりとルールに沿った注文請書を使って、双方が安心できる契約を結んでいってはいかがでしょうか。
制作:工場タイムズ編集部