道を歩いているときたまに見かけるのが、丸い形が特徴的なマンホールの蓋(ふた)です。
ただ、よく見かけるとはいっても、マンホールがどんな役割を果たしているのか、マンホールの中がどうなっているのか、何のためにマンホールに蓋がついているのかといった点については、考える機会がなかなかないかもしれません。
そこで今回は、マンホールの用途をはじめ、マンホールの蓋の意味やデザインなどについてご紹介します。
マンホールって何のためにあるの?
まずは、マンホールの役割について説明します。マンホールは英語の「man(人)」と「hole(穴)」を組み合わせた言葉です。直訳すると「人孔(じんこう)」という意味で、地下に埋められている設備を点検・管理するために人が出入りする穴のことです。マンホールは、水道管や汚水用の配管、火災発生時の貯水槽、消火用の水道管、ガスの配管などそれぞれ用途別に分かれていて、必要に応じて点検・管理ができるようになっています。
最近では、人が入らずに機械を中に入れて点検を行う場合もあります。マンホールはその用途によって、一定の間隔で設置されています。マンホールと似ているものに「ハンドホール」と呼ばれる穴があります。これは身体ごと入れるのではなく、工具や手だけを差し入れて作業ができる小さめの穴です。ケーブルの挿入や撤去時に利用されます。
世界最高水準!日本のマンホールの蓋
次に、マンホールの蓋について説明します。マンホールがある場所は、ほとんどが道路などの公道です。もしマンホールに蓋がついていなかったら、歩行者がマンホールの穴の中に落ちてしまう危険性があります。また、道路は歩行者だけでなく車やバイクなども通るため、マンホールの蓋がもし柔らかい素材でできていたら、車の重さに耐えられない可能性があります。そのため、マンホールの蓋は橋とほぼ同じ基準でつくられていて、とても頑丈です。
マンホールの蓋といえば、丸い形が頭に浮かびますが、これにはいくつか理由があります。もし蓋が四角いと、蓋を開けたとき蓋が中へ落下し、作業している人を直撃する恐れがあります。もともとマンホールの穴は蓋よりも少し小さくしてあるので、丸い形なら穴へ落ちることを防げます。たまに四角いマンホールの蓋を見かけますが、それは多くの場合、消火栓です。これは消火栓を使用する機器が四角いマンホールに適していることに加え、作業のしやすさが理由です。
日本のマンホールの蓋は、世界トップクラスの高い機能性を持っています。海外のマンホールの場合、ほとんどが「平受け」と呼ばれる構造になっており、蓋が小さく、蓋とマンホールの枠の間に隙間ができています。そのためガタつきが起きやすくなり、歩行者や車が通ったときに騒音が起きてしまうのです。日本のマンホールも以前は「平受け」を使用していましたが、蓋とマンホールの枠がピッタリとはまる「勾配(こうばい)受け」と呼ばれる技術を開発したため、騒音が起こりにくくなっています。
日本のマンホールの蓋は普段は外から開けられないようになっていて、専用の工具を使用しないと中に入れない仕組みです。そのため、防犯面も安心です。大雨や洪水などで冠水が起き、蓋に下から圧力がかかった場合でも、蓋に錠と蝶番(ちょうつがい)が付いているため、蓋が圧力に負けて飛ぶこともありません。また、蓋はサビにくい鉄製で、歩行者や車が滑らないように模様がつけられたデザインになっています。
マンホールのデザインを楽しむ!
マンホールの蓋にはユニークな歴史や、いろいろなデザインがあります。映画『ローマの休日』でおなじみ、イタリア・ローマにある大人気の観光スポット「真実の口」は、もともと2000年ほど前に使用されていた下水溝のマンホールの蓋でした。
一方、現在の日本では、ご当地の「ゆるキャラ」や観光スポット、名産品、人気アニメのキャラクターなどの模様を描いた「デザインマンホール」を各地で見ることができます。たとえば、広島県にはプロ野球「広島カープ」のキャラクター「カープ坊や」が描かれたマンホールがあります。長野県には1998年の冬季五輪開催を記念して作られた「五輪」をモチーフにしたマンホールが知られています。ほかには、漫画家やなせたかしさんが育った高知県に『アンパンマン』の模様が描かれたマンホールがあり、地元の人たちに親しまれています。
また、「骨董(こっとう)蓋」と呼ばれる、昔ながらの姿を今に残すマンホールの蓋があります。広島県には、戦前につくられたマンホールが、現在まで壊れずにその姿を残しています。同様に東京都にも、戦前につくられ、すでに消滅した自治体の名前や紋章が描かれた蓋を今も見ることができます。
実は奥が深い、マンホールの世界を楽しもう!
マンホールは道路の飾りとして存在しているわけではありません。下水道の管理、点検、清掃の際に利用するため、一定の間隔で道路に設置することが必要なのです。日本のマンホールの蓋は世界的に見ても優れた構造をしていて、デザイン的にもユニークなものがたくさんあります。これまで気に留めていなかった人も、今度歩いているときに何気なく下を見てみると、珍しいデザインをしたマンホールの蓋に出合えるかもしれませんよ。
制作:工場タイムズ編集部